05 絶望ノ中で
最近忙しくてなかなか更新することが出来なくてすごく悔しいです…
まだまだですがよろしくお願いします!
江戸に着いた辰月達はアルカと別れ、辰月の家に来ていた。
「辰月さんって、結局江戸に何しに来たんですか?」
「んー?まあ色々だ、まあ普通に疲れたから帰るってのが大きいね」
「えー教えてくださいよ」
辰月のハッキリしない物言いに哲平は物足りなさそうな顔をしている、当の辰月はソファに寝っ転がりながら漫画を読んでいる、すると辰月はおもむろに起き上がり哲平の方をむく。
「腹減ったし飯行くぞー」
「あ、良いですね!僕江戸の店行ったこと無いんですよ」
「高い所は行かないからな」
2人は話しながら出かけ準備をし、家を後にすると辰月の家の近くのファミリーレストラン風の店に入った。
「フライドポテト1つ」
「辰月さんそんなものしか食べないんですか?あ、僕はこのチーズ納豆ステーキで」
「お…お前さらりとエグいの頼むな……」
2人が席に座り注文を終えると、ちょうど夕飯時だったのか店内が混み始める、若いカップルや仲の良さそうな家族、明らかに頭の固そうな侍など、色々な人が店に入り始める。
「混んできましたね、僕らちょうど座れてラッキーだったかも」
「そうかあ?人間てのはどうして同じ時間に同じ時間をしようと思うのかねぇ…今のこの光景こそ周りに合わせて生きる現代人の悪しき風習を表してると思わないか?」
「僕らもその中の人間ですけどね、あ…ちょっと!どんだけ塩かけるんですか!積もってんじゃん!塩分超過で死にますよ!?」
「ポテトにゃこんくらいの方が美味いんだよ、店のポテトは薄くていけねえ」
2人の頼んだものが運ばれて来たので2人が食べ始めると隣の席のカップルが妙な話をしているのが耳に入ってきた。
曰く、裏の林を2人で歩いていた時に忍者と思われる数人が女性を襲っていたらしい、女性もただではやられておらず、反撃しながらもそこは多勢に無勢、やられないようにするのでいっぱいいっぱいだったと。
「辰月さん…今の隣のカップルの会話、聞いてました?」
「あぁ、夜の林を2人きりで散歩してたとは、何て羨ま…じゃなかったけしからん奴らだ」
「いや違うでしょ!もしかして、襲われてるのってアルカさんなんじゃないですか?」
哲平は、辰月が真剣な顔をしているから聞いていると思っていたのに、全く違う事に関心を持っていた事にため息を吐きながらも女性について促す。
「そうかもしれないな、だが哲平…お前この話聞いてどうするつもりだ?まさか助けに行こうとでも?」
辰月はどうやら端から分かっていて見当外れなことを言っていたようだった。
「そのまさかですよ、放っておけない…ほんの僅かな間でも江戸まで一緒に来たんだ、こんな話を聞いたら助けに行かなきゃ!」
哲平が焦りを顕にしそう捲したてると、途端に辰月の雰囲気が変わり凄まじい殺気が暴風のように哲平を襲う。
「さっきも聞いたが行ってどうするつもりだ?相手は忍数人、隣の奴らが見ていないだけでまだまだ多いかもしれない、町のチンピラ侍数人も相手にできないお前が行った所で何ができる、死ぬぞ」
「わ…分かってます…でも行かなきゃいけないんです、ここで動かなければそれは僕の武士道に反する事になる、勿論辰月さんには頼りません、でもこれは…僕が侍として生きていく上で、どうしてもゆずれない事なんだ!」
豹変した辰月の殺気に押されながらも哲平は断固として目を逸らさない、しかし哲平の態度とは裏腹に足は竦み体は小刻みに震えている、辰月はその心の内を見透すように哲平の顔を数秒見つめる。
「ったく…仕方ねえな、行くぞ」
辰月はガシガシと頭をかきながら最後のポテトを口に放り込み席を立った。
その辰月の表情は、どこか少し嬉しそうな顔をしていた。
「辰月さん!」
哲平はホッとしたような、嬉しそうな顔をしながら立ち上がった。
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江戸にある中で1番大きい林、その中の1本の木の下に服部アルカは隠れるように座っていた。
「はぁ…さすがにあの数相手は、ちょっと無理…まさかこんなに早く来るなんて…」
修行の為に等と言ってみたものの、実際は里を追われ、逃げるように江戸へ向かっていたのだ、やっと江戸につきとりあえず今夜の宿を探そうとしていた矢先に里の追っ手に見つかってしまったのだ。
「私は捕まれない、お父さんとお母さん、それに良磨の敵を取らなければ…それには現頭領よりも強くならなければいけない、なのにこんな所で殺されるなんて……」
嫌だ、見つかれば殺される、初めての地での孤独な戦いは、普通の戦闘よりも大きくアルカを疲弊させていた。
「見つけたぞ、服部アルカ」
「はっ!」
気づけばアルカは忍びたちに囲まれていた。
もはや立つこともままならないアルカだったがまだ戦い用はあった、それはアルカの異能力である断罪者の行使だ、しかしこの能力は燃費も悪くその上派手であるため忍びのアルカは殆ど使ってはいなかった。
「もう諦めな、あんたの父、服部泰造は確かに我ら伊賀忍び衆の長だった、だがあんたら一族は負けたんだ、既に伊賀の里はあのお方のもの…元頭領の娘は生きてちゃいけないんだよ」
「私は…こんな所で終われない!」
「断罪の光輪!」
気合いで立ち上がるとアルカの自分の異能力の使える中でも1番広範囲の技を行使する、それは断罪の光、悪しきを滅し善者を救う神の審判。
しかし周りの忍のうちの一人が合図をすると、一斉に周りを囲んでいた男たちは跳び上がると謎の道具を使い防御してしまう、降りてきた男たちは……無傷であった。
「そ…そんな…」
自身の渾身の一撃を事も無げに防御されたアルカは絶望の表情を浮かべる。
「残念だったな、これは三種の神器のひとつ八咫鏡、我々は頭領よりお前の処分を仰せつかったのだ、何の対策もしていないわけが無いだろう」
アルカは悔しそうな顔をしていたが、やがて俯くとだらんと力が抜けた様に気によりかかった。
「もう…抗えないか…」
リーダーらしき男はアルカが諦めたのを満足そうに見ると、背中の忍刀に手をかける。
「冥土の土産だ、最後に良い事を教えてやるよ、お前が必死に逃がした弟…良磨の事だ」
「!?き…貴様ぁ!良磨に何をした!?」
アルカは必死に崩れ落ちそうになる体を支えながら不安に満ちた表情を浮かべている。
「死んだよ」
「は?」
「死んだのさ、あいつも拷問した後に貼り付けにして刺殺してやった、楽しかったぜえ?最初は威勢が良かったんだが両足を切り落としたあたりからかな?姉ちゃん姉ちゃんと泣き叫んでたな、来るわけがないのにさぁ!ハァハハハハハハハ!」
男の話を聞いたアルカの表情は絶望一色に染まっていた、何かが切れ、完全に心が折られてしまっていた。
「そ…そんな…良磨…良磨!ああぁ」
崩れ落ちたアルカはもう何をどうすればいいのか、なぜ逃げていたのか、生きている意味すらもわからなくなっていた。
もう…死んでもいいや
アルカは本気でそんなことを考え、目の前の男を呆けたように見た。
「何だ壊れたのか?つまらん、まだこれからたっぷり痛ぶった後に殺してやろうと思ってたのに」
男は拍子抜けした顔をすると忍刀を抜き、構えた。
「じゃあな、元頭の娘よ…うがご!?!?」
刀を振り下ろそうとした直後、男は何者に蹴り飛ばされて吹っ飛び木に激突してしまう、周りで警戒していたはずの部下たちもその謎の男の接近に全く気づくことが出来ず、戦慄の表情を見せる。
乱入者はアルカの前に立つと頭をそっと撫でる。
「よう、良く頑張ったな」
アルカは、この男が何者か知っていた、何故自分がここにいることを知り、駆けつけたのかは知らない、だけどアルカの頭を撫でた手は、掛けられた声は、確かに暖かかった。
「………うん…!」
目から溢れる涙を拭いながら、アルカは男に抱きついた、そこで先程蹴り飛ばされた男が起き上がり激昂する。
「貴様ぁ!いきなり蹴り飛ばしやがって!何者だ!!」
男はゆっくりと立ち上がり向き直ると、
「坂本辰月」
不敵な笑みを浮かべていた。
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