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最強のサムライ  作者: 須那 洋
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03 江戸への道のりは遠い

楽しく読んでいただけたら幸いです!




バスに揺られながら坂本辰月は初めて哲平を見た時を思い出していた、何やら路地裏で揉めているようなので覗いてみると、むさくるしい浪人達にボコボコにされている哲平の姿があった、ボコボコにされながらもその目からは力を失っておらず、守る意思を崩さずに最後まで戦っていた。

普段坂本はあの様な小競り合いには関わらないと決めているが、その直後の哲平に気づくと驚き、すこぶる興味が湧いた。


哲平は最後の手段と明らかに何かの異能力を発動させようとしていたが、その能力はお世辞にも浪人達を倒すに至るようなものでは無かった、哲平のあの目は己の実力を過信している目では無かった、だが己の実力を理解し、尚も戦おうとしているその目は坂本を動かすのに充分な理由であった。だからこそ坂本はあの小競り合いに割って入ることに決めたし、哲平の今後を見てみたいと思ってしまったのだ、今まで自由気ままに生きてきた坂本辰月にとってそれは初めてのことであった。



「何笑ってるんですか?」


隣の哲平が顔を覗き込んで聞いてくる、辰月は、ほんとに面白いやつだ等と思いまた笑う。


「いや、何でもない、それよりもう少し進んだら降りるぞ、そこから先は歩きだ」


「え?このバスは江戸まで行きますよ?なんでわざわざ降りるんですか?」


哲平は、こいつ何を言ってるんだ?とでも言いたげな顔で辰月を見ている、確かに正論なのだが、降りなければいけない理由があるのだ。


「金がかかるだろ、江戸まで行くのにいくらかかると思ってんだ、あともう少し行ったところで降りなきゃ値段が上がるんだよ」


「あぁ!!そ、そういう事か…そうだよ、よく良く考えれば僕も辰月さんも金が無いじゃないか、バスになんて乗れるはずも無かったのか…」


哲平は自分の現実を思い出すと思いっきり凹んでいる、辰月達が乗っているバスには何人か他にも人が乗っているが、他には途中で降りる予定の人はいないようだった。


「はぁ……お金さえあればなぁ、バスで江戸まで一瞬で行けるのに、」


「まあ一瞬は無理だとしてもかなり早くついてたな、まあ江戸までの道のりはさほど遠くないしゆっくり行こうぜ哲平くん」


2人がバスを降りて歩いていると、何やら少し行ったところで先程のバスが停車しているのが見える。


哲平は、はて?あんな所にバス停なんかあっただろうか等と思いながら目を凝らしてよく見てみると、バスの周りには数台のバイクに乗った男たちがおり、明らかに穏やかではない光景が広がっていた。


「辰月さん、あれ!」


「おーありゃ強盗か?ハイジャックか?この内戦続きの時代にまだあんなバカなことする奴らがいたとは、いや、ありゃ革命家かな?」


「辰月さん!そんな悠長に見てる場合じゃないですよ!あのバスには少なくても人が乗っているんです!助けなきゃ!」


辰月はやる気がなさそうにしているがそれでも襲われている人達を見捨てることなどは出来ない、それは辰月が掲げる武士道に限りなく反する事だ、しかし今隣には哲平がいる、相手は武装している、異能力もどのような物かは分からない、仕方が無いと辰月は哲平にバスの人達を守らせるか後ろの方で見させ、自分が他を相手取るしか無いだろうと踏んだ。


「しゃあねえな、その前に哲平、ほれ」


「へ?わ!」


哲平は投げ渡されたものを見て訝しげな顔をする、辰月が渡したのは竹で出来た刀、俗に言う竹刀であった、刀なら持っているのだが、どうしてこんなものを渡してくるのか?と哲平は理解出来ず困惑した顔で辰月を見る。


「お前はまだ自分の型が出来てない、剣を振ることには慣れているが見た所人を対人戦の経験が圧倒的に欠けてるな、今んとこは竹刀でも使っておきな、その竹刀をしっかりと使いこなす頃にはその腰の物も多少は扱えるようになってるだろうよ」


「なるほど、分かりました、でも気をつけてくださいね?」


「まあ、面倒くさいしさっさと終わらせようか、早く江戸につかないと日も暮れちまうしな」


辰月言うやいなやバスに向けて走り出した。

走りながら抜刀すると、飛び上がり騒ぎのど真ん中に着地する。ちょっとだけキザな演出をしてみたのだ。


「お姉さん久しぶり」


「え?」


辰月は先程バスで近くに座っていた人に軽く冗談を言うと、リーダーらしき金髪メガネの男に刀を向ける。


「何がしたいかは知らないが、何も言わずにここは退いてくれれば助かるねえ」


「何ですかね?いきなり、そんなことを言われてはいそうですかと退く人がいると思いますか?」


リーダーらしき男は、何を言ってるんだこいつ?とでも言いたげな目で辰月を見ている、それにしても、リーダーらしき男の口調は普通人を襲う人間の口調では無く、キャラ間違えてません?などと辰月は脳内でツッコミを入れていた。


「そりゃあ面倒なこった」


辰月のバカにした態度にイラッと来たのか、男は不気味な笑みを浮かべる。


「ワタシはね、仕事の邪魔をする人とファンに媚びた笑みを振りまくアイドルが大嫌いなんですよ、誰であろうと少しでもワタシの怒りに触れれば…」


「生かしてはおかんのだ!!!!」


男は信じられない速度で抜刀し辰月に斬りかかった、しかし辰月も予想していたのか全く引けを取らない速度で刀を振るう。


ガキィ!という刀と刀がぶつかり合う音が辺りに響き、遠くで見ていた哲平が気づくと両者は鍔迫り合いの状態に入っていた。


「おいおい、じゃあそれ俺関係ないじゃん、俺アイドルじゃないし?媚びた笑みも浮かべた覚えが無いんだがねえ」


「仕事の邪魔してるだろうが!それに貴様のその飄々とした態度も気に食わん!」


男は辰月の刀を弾くと、そのまま上段から切りこもうとする、そうはさせまいと蹴りあげた辰月の足が男の腹に直撃し男は後ろにふっ飛ばされた。


「ちっお前面倒だよ、鬱陶しい、あぁ鬱陶しい!!」


男はイラついた素振りで頭を掻き毟ると、何かに気づいたようで信じられないといった様子で目を見開いている。


「赤毛の侍、ま…まさか貴方、坂本…辰月ですか?」


「そうだけど?」


「な!?撤収!お前たち!引き上げますよ!」


「え!?帰っちゃうの!?」


男はますます焦り始めると、連れていた他の浪士たちを連れて急にいなくなってしまった。

辰月は、せっかくやる気になっていたのに、当の相手は自分の名前を聞いた瞬間に急に態度がおかしくなり、挙句さっさと帰ってしまったため目を点にして固まっている。


「辰月さん、大丈夫ですか!?」


離れた所で見ていたが、男達は立ち去り、もう大丈夫だろうと哲平が合流する。


「あ、あぁ…何か帰っちゃった、洗濯物でも干しっぱなしだったのかな?」


「んなアホな」


辰月は、哲平と軽口を叩いたところで周りの人達に危害がなかったかざっと確認するも、バスの運転手が早々に逃げてしまったこと以外は特に何も無かったようだ。

そこで先程冗談を言った女性が目に入った辰月は、さわやかさスマイルを作り出し、女性の手を取ると。


「お姉さん、お怪我は?」


等と思いっきりカッコつけてみた。


「邪魔しないで欲しかった」


「へ?」


辰月は、ありがとうございます!等の言葉をかけられると思いカッコつけて見たのだが、返ってきたのは全く違う言葉だった。


「あんたが入ってこなくたってあんな雑魚ども私1人で何とかなった、あんなカッコつけて入ってきてそのくせ逃げられてるんだもん、かっこわる」


「へ、へ〜そう、何とかなったんだ〜、でも俺が切りあった感じだとあの男只者じゃなかったね、もう大剣豪かそれ以上かってくらいの強さだったからね?俺だったから何事もなく追い返せたのであって君が何かした所で何も出来なかったんじゃないかなあ?なあ哲平くん?」


辰月は頬をピクピクさせながら哲平に同意を求めてくる。哲平は内心僕に振らないでくれよ等とため息を吐いた。辰月はとてつもなく強い、先程の戦いでも余裕を見せていたし、カッコつけすぎていたぶん若干台無しだったと言うだけで。


「必死だったくせに」


「必死じゃなかったし!?余裕だったし!?なんなら切りあってる最中に前髪が鬱陶しくてずーっと気持ちそっち言ってたわ!あ、そうだよそれ!前髪に気がいってる間にあいつに逃げられたのであって本気だったら逃がしてませんでした!」


「ふーん」


「こいつ……!」


尚もバカにした態度でニヤニヤしている女性に、辰月は青筋を浮かべてまたもピクピクしている、しかし辰月もそこは大人、直ぐに切り替えると哲平に向き合う。


「まあもう解決したし、もう良いだろ、行くぞ哲平」


「はいはいわかりました」


「何だその目、お前まで俺をバカにするのか」


もう問題は解決したのだしいいだろうと辰月と哲平は再び江戸に向かって歩き始めるのだった。







お読みいただきありがとうございます!

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