黒いサルビア
黒い、
僕がはじめて東尋坊へ行ったときの感想だ
龍が爪で石を引っ掻いたような
ごつごつした岩肌や形に、まだ小さかった僕は
恐怖と風の強さにまみれて
父親の背にピタッとくっついていた。
「ねえ、パパ」
「どうしたんだい、レムラ」
「どうして僕をここにつれてきたの?
「それはな、パパが好きな人が大好きだったからだよ」
「ママのこと?」
「どうかな」
「パパはいつも僕になにも教えてくれないじゃないか」
「ハハハ、そんなことはないさ、この間だってパパが働いていた遠い向こうの星について教えただろう」
「レムラーニャ星のこと?あれはもう飽きたよ」
「そうか」
パパは不思議で、幼少気から僕に秘密を隠していた