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No.38 孫娘
私の一人娘はお産トラブルで死に、その命と引き換えに生まれた初孫を私は大事に育てた。しかしこの孫は愚かだった。
今まさに私は、孫が連れてきた友人達の手で動脈を切られ居間の床に放置され死につつある。一方孫は金庫の鍵の暗証番号がわからずタコ殴りにされている。手足を折られた孫が蹴られて私の隣に倒れぐったりと並ぶ。彼女もまた全身痙攣をおこして死につつある。飼犬や小鳥が死んでも平気な子だった。だから祖母の私が殺され、自分も殺されても平常心で受け入れられる。
薄れゆく視力を懸命に凝らし、私は孫の目を見つめる。やはりそこには反省の色もない。間もなく行く地獄でがんばりなよ。孫の友人たちは金庫の鍵穴をバールで広げたものの、そこから毒ガスが噴射して即死済だ。私達の死体は後日回収されるだろう。私は視界すべてが白い闇に変化したのを感じてやれやれと溜息をついた。上空の光目指して私はふわりと浮かぶ。孫は闇に沈む。