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No.33 格下げ
あんなあ、俺の住んでいる宮殿の窓には全部鉄格子がはまっているんや。いや、てつごーしと読んでや。間違えなや。それでそのてつごーしがな、どういうわけか時々消えるんや。霧の湧いている日が多い。そういう夜はてつごーしが、手足を組んでてつどーしになる。つまり線路になる。その線路をたどって、宮殿から抜け出し、城下町をお忍びで見学に行ける。前も後ろも霧で人間も木々も建物もわけわからん。それでも楽しい。線路から出ない限り、俺は迷子にならぬ。しかし他の人々と接することはないのが嫌やん。一緒に話したり食事をしてみたい。一度だけでいいから長い髪の笑顔が素敵な女の子の手を握りキスというものをしたい。
宮殿での生活も飽きある夜俺はわざと線路から足を踏み外した。とたんにまぶしい太陽の光の下、大勢の通行人から跳ね飛ばされた。しりもちをつく俺に誰も見向きもしない。助けてくれと叫んでもや。宮殿に戻してくれと言ってもや。




