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No.2 お辞儀


 十四才の我が娘を自殺未遂に追い込んだ主犯の家は寺だった。転勤族なので知らなかったが地元では名家らしい。敷地は広大で学校側の腰が引けた態度に納得だ。いじめた方が学生生活を平気で続けるのは矛盾だ。

 私は主犯の親である僧侶と話し合う。しかし彼は「儂の子だけを責めるのは不公平」 と主張する。受験もひかえているし、穏便にすませましょうとも。話にならず引き下がるしかなかった。いじめの本質に学校や親は介入できぬ。私は項垂れ、本堂を出て広い庭を横切る。大きな緋鯉が池の水面から垂直に立ち一列に並んでお辞儀をしている。本堂を見返ると金色の仏像がお辞儀をしている。松の大木たちもお辞儀をしている。水色の空を背景に寺全体が私に向かってお辞儀をしている。

 帰宅すると娘が迎えてくれた。私は久々に娘の八重歯を見た。

「お母さん、お帰り」

 生きていてくれて有り難い…涙が出るので私は手で顔を覆い娘にお辞儀する。


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