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NO.13 回想
貧乏神と暮らしていた。それなりに幸せだったと気づいたのは外国くじの当選後だ。30億円もらって成金になった私。人々がとても仲良くしてくれた。でもそれは私のお金欲しさのためだった。私は騙された。文無しになると誰も寄り付かない。
再びあばら家に戻った私。貧乏神が「おかえり」と抱きしめてくれた。
窓にはお米のおこぼれを待つスズメ、小さな庭に種々の草花、空は青く山の形も変わってない。戻る場所があってよかったと心から思った。貧乏神は猫飯を作ってくれた。そこに炒り卵をかけてくれる。私の好きなものを覚えてくれている。それがどんなに幸せなことか。お礼をいうと貧乏神が微笑む。
「戻ってくれて有難う」
でもやはり貧乏はつらい。ふかふかのベッドで寝たいし、美味しいものばかり食べたい。着飾って踊りたい。私は再び貧乏神に隠れて外国くじを買い始めた。当たれば今度こそ貧乏神を捨てて、慎重にお金を使うつもりなのよ。




