ACT#3 【虚無】
何もなくなった、いや、はじめから無かった。
気が狂ってしまった、違う、はじめから狂っていた。
病み果てた先の虚無にしか創作は存在しない。永遠に虚空を見続け、そこになにもないことを確認して、表情に出さない病み狂った笑顔を精神の底に浮かべる。
一つの表情のなかに何億もの全体意識からのアイディンティティを見受けて第三者の狂人はもう帰ろうと身支度を始める。
海の底に咲く花にさえ闇ではなく光を感じそれを必要としない狂人は更にマグマの層を目指し破壊的な表現のドリルで深海にある地面を掘り進む。休むことなく狂い続け、地下にあるコアを見たときそこに新しい宇宙の誕生を見つけ喜んだあとすぐ虚しさの中に沈む、そこにも同じ海がある。そこにも同じ深海がある。
一点を見つめたまま私は朝焼けを待った。
精神は永遠の虚無を保ったまま。
「ベルの音がなります、午前5時の、ベルの音がなります」
朝焼けを待たないまま私は目を覚ましてしまった、虚無は続かなかった。
そこには凡百なるいつもの幸福があった。
私は一時の幸福に酔いしれる、甘い酒のように。
しかしまた、私は虚無を探し列車に乗るだろう、終点も駅さえもない4次元を走る列車に。
開けてくれと叫びながらドアを叩いても、開くことはない。
「お客様、ここは終点ですよ、」
そんな声が聞こえる。
「終わりの無い終点なんです。だから降りられないんです、あなたは死ぬまで降りられない。」
私は良い場所にいる。良い場所なのだ、降りる必要はない。
「左様ですかお客様、ごゆっくりどうぞ。」
ゆっくりとは、出来ない、また、精神的な狂気と虚無を探しに行く。
終わることの無い虚しさ。