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海獣達の野球記(ベースボールライフ)  作者: Corey滋賀
4章 王座奪還
37/65

34 ルーキーとスランプ

内容を短めにして投稿頻度を高めようと思います

※和人視点


キャンプ初日、久々のブルペンに入り軽く捕手の峰岡さんとキャッチボールをしていると、おー!とファンの歓声が聞こえた


ん?もしやこれは僕への歓声...かと思ったのも束の間


僕の隣に一軍帯同中のドライチルーキーの瀧内くんがいることに気がついた


「初めまして。みんなのアイドル佐々城和人です!ファンフェスの新人挨拶で特技のダンス披露してたけどかっこよかったよアレ」


初見からいきなりサムいノリを吹っ掛けると当然困惑しながらも、礼儀正しく帽子を取って挨拶を返してくれた


「え、あ...はい。初めまして、瀧内です。はい、ダンスは昔から習い事でやってて得意で...ありがとうございます」


おぉ、素直でかわいいじゃないかぁ...


そんなことを思っていると捕手の防具を身に纏った浪川くんが彼に話しかける


「今日君のキャッチャーを勤める浪川だ。よろしく。どんな球を投げるのか楽しみだ」

「い、いえ、俺なんかまだまだ...でも期待に応えられるように頑張ります!」


張り切る瀧内くんの姿を見て僕のやる気もみなぎってきた


「よし、いきますよ嶺岡さん!」


掛け声を上げると腕を久々に強く振る


今年の取り組みとしてはチェンジアップの制球力を上げることと真っ直ぐの強化だ


オフに浪川くんら捕手の人達と研究をしてみるとどうやら僕のストレートは僕のように細長い指でないと投げられない球で、しっかりと縫い目にかかると普通の投手ではなかなか出すことのできない2600を越える高回転ゆえに打者は浮き上がって見えるようだ


久々の投球はしっかりとストライクに決まり140キロ中盤をマークした


「うん。いい感じ!瀧内くんの方はどう...」


丁度ワインドアップの投球動作に入っているところだったがその高卒1年目とは思えない洗礼された流麗フォームに目を奪われた


そしてそのフォームからリリースされるボールは良いスピンと見事なコントロールでミットに入っていった


捕っていた浪川くんも少し驚いたような顔をしていた


速さとしては140前半か中盤辺りだけど打者は体感としてはそれよりも速く感じるだろう


それを見事に外低めへ決めることができる素晴らしい制球力


正直僕よりコントロールがいいかもしれない


「ど、動画で見たより凄いな...あと二、三年すれば下手したらエースに...」


ふと呟くと瀧内くんは謙遜して首を横に振る


「いえ、まだまだ技術も体格もろくなもんじゃないんで...」


謙虚なのは悪くないけどこれだけの実力があるなら浪川くんくらいビックマウスでもいいと思うんだけどなぁ


よし、僕も負けてられない!来週の紅白戦には万全な状態にして三村新監督にアピールしないと


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


その紅白戦は7-4で一軍が勝利し、ルーキー含む若手が目ぼしい活躍を見せた


二軍チームではドラフト二位の小鳥遊くんが中距離打者らしく5の3の猛打賞、そしてオフにまっすぐの威力を強くすることを意識して練習していた川畑くんがそのまっすぐでソスさんから三振を奪うなど一軍相手に1回と1/3イニングを投げて無失点という好リリーフ、一軍にアピールをした


二軍に合流した瀧内くんは先発として登板して3回4失点


結果はまずまずだったが内容としては一軍相手に2回まで無安打に抑え込むなど大器の片鱗を見せた



一方一軍では筒号さんの穴埋めを期待される長距離砲の細山くんがホームランを含む4の2、僕もMAX155kmを計測するなど1回を投げて無失点と状態はいい感じだった


ただ気がかりな点が二つ、浪川くんが4の0、そして新キャプテンの矢野さんも同じく4の0と今年の横浜を担っていかなければならない二人に当たりが出なかったことだ


恐らくまだ調整が上手くいっていないだけだろうけどなんとか今後のキャンプやOP(オープン)戦で開幕までには元の調子に戻してもらいたいところだ



バレンタインデーでは姉二人と妹と母から市販のチョコ、そしてありがたいことに美波ちゃんからは手作りのものを貰った


味もめっちゃ美味しかったが現在彼女無しの川畑くんが血眼で無言の圧をかけてきて食べづらかった


ちなみに美波ちゃんは卒業してからファミレス店員になって頑張って働いているそうだ


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


『低めのチェンジアップ空振り三振!佐々城は現在OP戦に五試合登板していますが、いずれも一人の走者も許さず開幕に向けて好調を維持しています』


うん、間違いなく今の僕は凄い、自画自賛できる


今までで一番球走ってる


オフに鍛えたチェンジアップとまっすぐが気持ちいいくらいにズバズバ決まって正直全く打たれる気がしない


去年のイップスが嘘のみたいに投げるのがメチャクチャ楽しい


と、日記に似たようなメモをとっているとゴンッという鈍い音が聞こえてベンチと観客がざわめく


なんだろうとグラウンドを見てみると頭部死球を受けたのか浪川くんが打席で倒れていた


動けなくなっていた浪川くんは担架で治療室へ運ばれた


OP戦になってからも打率は二割を下回るなど調子を取り戻せていなかったところに追い討ちをかけられたような形になった


その後病院に搬送されたらしく試合後に見舞いに行くと意識は戻っていて、名和くんと一人の女性が先に見舞いに来ていたようだ


「あれ、名和くんも来てたのか。まぁ確かに今日タイガースとの試合だったもんね...そちらの女性は?」

「安里優香里と言います。彼の友人で...」


あーなるほど、この人が浪川くんの彼女の優香里さんか


若干色気のあるスレンダー美人でいかにも浪川くんの性癖にぶっ刺さりそうな感じだ


と、そこで浪川くんが口を開く


「悪い、名和と優香里。お前らちょっと外出ててくれ。佐々城と二人で話したいことがある」

「おいおい彼女さん僕とくっつけて大丈夫か?もしかしたら寝とっちゃうかも...」

「うっせぇよ童貞。とっとと出てけっつってんだろ」


少し怒号のように言葉を投げ掛けると名和くんも素直に頷いた


「あいよ。じゃ、またな浪川、佐々城」


二人が出ていくと浪川くんは深くため息をつく


「軽い脳震盪だってよ。開幕はギリ間に合うらしい」

「おー、それならよかった」

「よかねーよ。今の俺が復帰したところで邪魔にしかならねぇのに...」


ごろんとベットに寝そべって置いてあった本を読む


「もしかして弱点がバレたの?」

「あぁ、そうだろう。今のフォームだと低めの速球についていけないってことがバレて攻められまくってこのザマだからな。本当だったら今日の試合後に二軍落としてもらって新フォームを一から作ろうと思ってたんだが...安静にしないといけない期間を含めるて考えると開幕から約2週間の出遅れになるのに、それからいつもの感覚を取り戻して新しいフォームを作るとなったら復帰がいつになるのか分からない...ま、今の横浜じゃ今の俺の存在の有無が勝敗に関わることはないだろうがな」


と、自虐気味に笑うと本を閉じて僕の目を見て話す


浪川くんが自虐とは...脳震盪以上に重症だなこれ


「...佐々城。話変わって一つ質問があるんだが」

「う、うん」

「これはもしもの話だ。もしもお前がこのまま中継ぎとして活躍てチャンスがあれば先発に戻る気はあるのか?一応聞いてみたかったから聞いた」


あぁ、先発か...去年も結果残して監督にチャンスもらえたけど...


「そりゃ投手の花形だし勿論やりたいよ。でも今は与えられた場所でプレーしないとね。本音を言うと最初は嫌々だった中継ぎも今はなんやかんや楽しいし」

「...そうか、俺としてはお前がもう一度先発で投げる姿を見てみたいんだが...とりあえず開幕したら俺の分も頑張れよ」


浪川くんがグーを出してらしくないエールを送る


「サンキュー、浪川くんも頑張れよ!」


そのグーに僕もグーでコツンと合わせてグータッチをした



【公示】


横浜シーレックス

登録 川畑廉 投手

登録抹消 浪川泰介 捕手

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