2 運命のドラフト
あかんAクラスが危ない
ドラフト当日を迎え会場ではざわめきが起こっていた
『実績を考えるとやはりこうなったか!なんと、浪川泰介はホームス、チーターズ、バッフルーズ、ラビッツ、シーレックス、スワンズの六球団競合です!』
「お、おい六球団競合だってよ…」
「やっべぇ…レベルが違ぇ…」
そしていつ自分が指名されるかを見ていた和人はその状況を見て呆然としていた
(な、浪川泰介!?やっぱり競合…絶対指名されると思ってたけどまさかここまで…)
浪川泰介
野球センスの塊と言っていいだろう
彼は小学生の頃からその才能を知らしめた
打球の飛距離、足、肩、全てがずば抜けて、4年生ながら正捕手になり、所属していたリトルリーグをすぐさま全国へ導いた
シニアでも大活躍し、名門の大阪学蔭へ入学
しかし、ここで壁にぶつかる
シニアまでずば抜けていた能力は名門の大阪学蔭では「当たり前」だったのだ
それでも腐らず努力に努力を重ね一桁の番号を勝ち取る
背番号は「8」だった
正捕手にはなれなかったものの、強肩強打俊足の外野手として注目をあつめるものの「捕手としてプロに入りたい」とプロ入りを拒否
そして早田大学時代にその才能は暴れだす
1年から正捕手となり、ベストナインを獲得
四年夏と秋には野手タイトル総なめというとてつもない実績を残し、現在に至る
『さぁ…交渉権はどの球団が手に入れるのでしょうか?』
指名した六球団のGMや監督がくじの前に集まる
ファンの息が詰まる
そして満面の笑みで拳を高く突き上げたのは…
『サミネス監督が右手を突き上げたぁ!!浪川泰亮の交渉権は横浜シーレックス!!』
浪川に一斉にカメラのシャッターが光のシャワーのようになり、眩しさのあまり目を細める
それでも表情は崩さずじっとしている
(おぉ!シーレックスが引いた!)
和人は自身の意中の球団に指名された浪川を羨ましく思い、自分も指名してくれないかなぁとこっそり思う
そして全球団の一位指名が確定し、二位指名に入ろうとしていた
(さぁ、僕の指名があるとしたらここらへんの順位だ!お願いします…)
「横浜シーレックス」
「佐々城和人 投手 正教大学」
その瞬間、大学内が一斉に沸いた
「う、うそ…夢じゃないよね…?」
自分の頬をつねりながら和人は唖然としていた
すると、間も無く電話が入ってきた
「あ、もしもし佐々城です!…はい、ご指名ありがとうございます!…はい…はい、分かりました!よろしくお願いします!」
さっそく記者からの質問が飛び交う
「指名されてどんな気持ちですか!?」
「対戦したい打者は誰ですか?」
と、騒がしくなってしまっている
すると、監督が
「すいません、一旦佐々城を外に出させてくれませんか?」
と、外へ連行した
すると、外で部員の皆が祝福をしてくれた
「「「佐々城和人ばんざーい!!!」」」
「み、皆…あ、ありがとう…」
彼の目からは今まで流していた悔し涙とは違う歓喜の涙が溢れていた
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そして、落ち着いた所で質問に応答した
「ではまず指名されたことについて感想を」
「素直に嬉しいですね。小さい頃から応援していた球団なので自分があのユニフォームを着て野球を出来るなんてなんというか…夢のようです」
「対戦したい打者は誰ですか?」
「ホームスの柳井選手です」
「今年の抱負を聞かせて下さい」
「ローテーション入りして二桁は勝ちたいです!」
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横浜シーレックス指名選手
一位 浪川泰介 捕手 大卒
二位 佐々城和人 投手 大卒
三位 田中太郎 内野手 社会人卒
四位 川畑廉 投手 高卒
五位 沢祐毅 二塁手 高卒