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海獣達の野球記(ベースボールライフ)  作者: Corey滋賀
2章 前半戦スタート
15/65

13 浪川の怒り

新外国人のピープルズどうなんだろ


『ここで強打者の坂木を迎えます。いやー苦しい立ち上がりですねぇ』


『そうですねぇ、むしろここを無失点で切り抜けたら攻撃に流れが来るんじゃないですか?』


『なるほど、さぁこのピンチをどう切り抜けるか』


周りは不安だったが正捕手の伊東は早速ウォンの変化に気付いた


(ウォンの目の色が変わった...追い込まれているはずなのに不安どころか余裕すら感じるぜ...これから本領発揮ってこったか)


ゲッツーシフトを敷き伊東がウォンにサインを出す


(そんじゃその余裕が本物か見せてもらうか...アウトローにストレート)


ウォンの投げた球はついさっきの球とは別のように鋭い唸りをあげて伊東のミットに突き刺さる


(くっ...すげえ重い!まるでウォンじゃない別の投手が投げてるみたいだ!)


一方の坂木は146kmという計測に驚いた


(おいおいウォンの最速って143kmじゃないのか!?どういうこった)


すかさず伊東がサインを出す


(インローにカットボールで詰まらせる)


坂木も伊東の思惑通りにバットを出してしまい中途半端なサードゴロになる


『坂木はサードゴロ、ベースを踏んでさらにセカンドへ渡って5ー4のダブルプレー!!これでツーアウト一塁となりました!』


根本で打ってしまった坂木は手を少し押さえながらベンチへ戻る


(まだ手が痺れてる...根本だったとはいえあそこまで詰まらせれるなんて...)


伊東がわずか2球を捕っただけでウォンのピッチングスタイルを理解した


(そうか、ウォンには「ギア」があるんだ!10段あったとして普段は5、6で投げているところ、ランナーが出たりしたら一気に8、9まで上げてピンチを凌ぐ...だからあのKBOで防御率2点台を記録できたのか...納得だぜ)


続く四番の岡もライトフライに打ち取り、ノーアウトのピンチを無失点で切りぬけた


「オッケー!ナイスピッチング!」


「すいまセン、ランナー背負っちゃっテ」


「結果的に抑えれば内容なんてどうだっていいんだよ。さ、次の回もきっちり抑えようぜ」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


一方、ブルペン内では和人がコーチ達と試合を見ていた


「ふー...無失点で切り抜けましたね」


「ウォンはピンチになってからの集中力が凄いからな...さて、このあとの攻撃が大事だな。あっさり終わっちゃまたあっちに流れが行くだろう」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


『この当たりは左中間を破っていきそうだ!神城悠々二塁へ。初球叩いてツーベース!ピンチの後にチャンスあり、神城いきなり先制のチャンスメイク!』


初球を流し打たれた堺は早くもイライラしていた


(あーあ、完璧なアウトローだったのに弾き返されちまった...しかも次浪川かよぉ...一塁空いてるしなぁ)


堺の投げた力強いストレートは大林の構えるアウトローを大きく外れ、浪川の体に直撃した


『ああっと!デッドボールです!大丈夫でしょうか?』


(最近こいつ当たってるし勝負しなくていいや)


浪川は腰を押さえながらへらへらしている堺に怒りを見せる


「...ってぇな...おい!ピッチャー、帽子取れよ。常識だろうが」


「は?別に良いだろ?メジャーじゃ普通取らねぇよ」


「ここは日本だ。早く取れ」


『あー浪川は堺が帽子を取ってないことに怒っているんですかね?』


『そうですね。堺選手早く帽子取った方がいいですよ。下手したら乱闘になりますから』


その様子を見ていた和人達も怒っていた


「あー!あいつ当てたくせに浪川に文句言ってますよ!」


「ありゃダメだな。帽子くらい取んないと...酷い目に合うぜありゃ」


放送席や観客も乱闘か?とざわつく中、浪川がちっ、と舌打ちをして呆れたように一塁へ駆ける


(はっ、礼儀もなってねぇ奴にマウンドを立つ資格なんて無いんだよ...さっさとボコスカ打たれて惨めにそこから立ち去れカス野郎)


浪川がぶつぶつと呟いていると早速三番のソスが初球を完璧に捉えてレフトスタンドにボールを運んだ


『またしても初球打ち!!そのままラビッツファンのいるスタンドへ!ソスの第7号の先制スリーランが出ました!』


呆然としている堺を横目に浪川がうっすら笑顔を見せながらホームを踏んだ


だがシーレックスの攻撃はこれだけでは終わらない


四番の筒号、そして五番の宮坂もホームランを放ち、三者連続ホームランでいきなり五点を先制、堺はワンナウトも取れずに降板ということとなった


後続はリリーフが断ち切ったもののいきなり大きな失点をし、ラビッツベンチは静まり、堺はチームに申し訳なくタオルを頭にかけ顔を上げることができなかった


(はっ、ざまーみやがれ。帽子すら取れない人間はこうなるのが当然なんだよ)


浪川が堺が大崩したことに内心喜びしながらなんとか真顔を保ち、守備位置についた

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