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異界の卵  作者: ハグキング
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6話 招集の訳

短めです

俺達が部屋に戻ると、先ほどいた全員がすでにいた。

そしてもう一人見覚えのないやつが一人。

たぶん俺の次に到着した7人目なのだろう。

ひょろひょろの体に疲れ切った顔、薄汚れた汚い金髪、正直あんまり強そうには見えない。もしかしたら他の5人のオーラが強すぎて感覚が麻痺しているだけで、こいつも実力者なのか?


 でもあんな汗かいて肩で息してるし、体力無いよなあれ。油断させるための罠か?



「あァ・・・全員揃ったなァ・・・」



 突如後ろから襲う気味の悪い気配。


 その場にいた全員が声の方向に目を向ける。

 俺も反射的に入ってきた入口の方にふり返る。


 予想通り、そこに立っていたのは眼帯男だ。眼帯の銀の髑髏刺繍が蝋燭の明かりに照らされて怪しく光っている。



「てめぇ!さっきの辻斬り野郎!」



 真っ先に食ってかかったのは俺の横にいたシドウだ。



「おォ?雷ライオン小僧じゃねェか。よしよしちゃんとゴールできたみたいだな。他にも俺様が認めた奴らは全員いるみたいだな」



 眼帯男はそう言いながら部屋をぐるりと見渡す。受験者達はおびえた表情をみえる者もいれば、シドウのように怒りを露わにしている者もいる。

 リリアも一瞬ビクッとしたものの、気を持ち直して鋭い目つきで眼帯男を睨んでいる。



 みんなの反応からして、全員この眼帯男に襲撃されたのだろう、そしてリリアの言っていた“選定”に合格した者だけがここにいる。



「あ?てめェは知らねェぞ?何でここにいる」



 眼帯男が7人目のひょろひょろ男に目を止めて言う。

 コイツだけ眼帯男に会わなかったのか?



「何でここにいるだとう?あの森を突破してきたからにきまってるだべ!」



 ひょろひょろ男、もうヒョロ男でいいや、ヒョロ男は田舎者みたいな訛りで眼帯男に言い返す。



「しかしあの森は地獄だったべ・・・天才のオラでも何度死ぬかと思ったか・・・村一番の足を持つオラより早くゴールするなんてオメーら中々やるな」



 こいつはあれだな、たぶん大した実力がないけど運よくここにたどり着いたクチだ。

 眼帯男もそう判断したようで、つまらなそうな目を向ける。



「あー・・・まァいいや、お前はいらないから今ここで死ね」



 眼帯男が背中から真っ赤な大剣を抜く。あいつも俺と同じ金属製の剣だろうか?

 唐突な行動にその場の全員が警戒をするものの、無暗には動かない。

 それにしても、受験者同士の殺し合いは禁止されてないとは言え、こう躊躇なく実行しようとするかね。

 


「おいおいおいご機嫌じゃねぇかよ!」



 悪人面のマッチョが愉快そうに笑う。

 こいつもたぶん眼帯男と同じタイプの人間だろう。



「オ?なんだオメーやる気か?やめといた方がいいぞぉー?」



 ヒョロ男はまるで危機感のない口調で立ち上がり、一応ファイティングポーズをとる。

 いやバディを出せよバディを。



「デスベルゲンさん、そこまでですよ」



 眼帯男が剣を振りかぶったところで、後ろからきたムース試験官に呼び止められた。

 デスベルゲンというのは眼帯男の名前のことだろう。



 ムースとデスベルゲンが睨み合う。先ほどより殺気がピリピリとした鋭いものになる。

 デスベルゲンは少し迷っていたようだが、剣を背中に戻した。



「まァいいか」



 デスベルゲンが殺気を引っ込め、空気が軽くなる。



「コホン、えー皆様お待たせいたしました。先ほど放送しました通り、まだ1時間残っていますが次の試験に進みます」



 デスベルゲンの戦闘意思がないことを確認してからムースが話し始める。



「どういうことだ?5時間経過すまでは待つのではなかったのか?」



 赤いマントの男がムースに問いかける。

 口元まで隠しているため表情まで伺えないが、ひらりと舞ったマントの隙間からホルダーにしまわれた銃が見えた。



「オーバンさん、本来そのはずだったのですが問題が起きまして」


「問題?」


「ええ、現段階であなた達以外の受験者は全員脱落しました。誠に残念ながらね」



 ムースはやれやれといった感じに首を窄める。

 赤マントの男、オーバンはその様子に少しイラっとしながらも聞き返す。



「全員?こんな森も越えられないとは、そんな軟弱者ばかりだったのか?」



 オーバンのこの質問にはデスベルゲンが答えた。



「あァ、それはな、お前ら以外の受験者を俺様が皆殺しにしたからだよ。ま、異獣に食われたり、途中でビビッてワープでリタイアした雑魚はいたがな」



「「なっ・・!!」」



 コイツ・・・選定しているとは思ったが、まさか受験者全員に攻撃を仕掛けていたってことか?

 しかも話が本当なら、逃げなかった奴は皆殺しか。本当にヤバイ奴だな。アンバスの認定試験に人格の判定があるのか知らないが、もしあるなら一発でアウトだぞこんな奴。



「つまりそういうことです・・・。次からは受験者同士の殺しは禁止した方が良いですかねぇ。」



ため息をつくムースに俺が問いかける。



「それで?試験はどうなるんだ?」



「そうですね、8人しか残っていないので全員合格、と行きたいところですがそうもいきませんので、皆様にはトーナメント形式の実戦試験をして頂きます」



「はーっ!いいじゃねぇの!実戦!ムースさんよ!そいつはもちろん何でもありのデスマッチだろうな!」



 悪人面のマッチョがガッハッハと楽しそうに立ち上がって割り込んできた。

やっぱりコイツバトルジャンキーだな。たぶん人殺しも相当な数してる。


 というかさっき「受験者同士の殺しはなくした方が良いかも」って言ってたろ。

話を聞いているのか。


「いいえ、グレゴリさん、大切なアンバスの卵をこれ以上潰されては困りますからね、殺しは無しです。対戦相手を殺した場合、その場で失格にしますので」



「ちっ!つまらんな」



 悪人面のマッチョ、グレゴリは唾を吐きながら椅子にドカッと座りなおす。

 デスベルゲンもグレゴリと同じ気持ちなのか退屈そうな顔をしている。



「それでは皆さん、舞台に向かいましょう。」


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