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序幕:赤い薔薇の園

こんばんは。


傭兵の国盗り物語の作者ドラキュラです。


今回はハインリッヒ・ウーファーを主人公にした小説です。


本編を更新しておりませんが、彼を主役にした本が先に思い付いたので書かせて頂いた次第です。


ただ時系列はボカシてあるので気軽に読めると思います。

 オリエンス大陸の一国に当たるサルバーナ王国。


 現在の王都は第2王都にして政の機関が置かれたヴァエリエである。


 そこには国王を始め直参たる中央貴族も居を構えており賑わっている。

 

 しかし最近になり廃棄された世紀の2大悪法である「禁酒法」及び「反売春法」によって郊外にも活気が溢れたのは皮肉な事だ。


 いやヴァエリエ郊外だけでなく地方にも活気が満ちたから両法を制定に持ち込んだ聖教派一味から言わせれば大損も良い所と言うべきだろう。


 とはいえ・・・・活気という嬉しい出来事だけがヴァエリエに訪れた訳ではない。


 それまでヴァエリエの裏世界の治安は「裏町」と言われる存在が一手に引き受けて平穏を保っていた。


 ところが内乱が起こった事で裏町はヴァイガーに移り・・・・それによって地方で暴れていた賊などが山津波の如く押し寄せて来るという負の側面もあった。


 もちろん王国も黙っている訳ではなかったし、裏町も支部を置いて治安維持に苦心したが・・・・それでもヴァエリエという土地は今までの「ツケ」もある為か・・・・やはり何処か抜けていた。


 そんな抜けている点が・・・・私の知人にも被害が及ぶから問題は大ありだ。


 だが・・・・私こと王立守護騎士団の国境警備課に所属するハインリッヒ・ウーファー「旗騎士」は獅子の盾に誓った言葉を守る義務がある。


 「・・・・獅子の盾に誓い、如何なる邪悪な存在からも王国に住む全ての民草を護る」


 私は目の前に人が居るにも係らず守護騎士団---旧聖騎士団に入団する際に誓った台詞を口にした。


 それを聞くなり案の定というべきか相手は眉を顰めてきた。


 「嗚呼、失礼しました。ですが・・・・言葉は訂正しませんよ」


 「マドモアゼル」・・・・・・・・


 「・・・・私は”マダム”よ。それを御嬢様呼ばわりするのは変えないの?」


 目の前に居た「傲慢と傲岸」が服を着たような令嬢は私を大きな瞳で睨んできた。


 そして背後に控えていた柄の悪い連中も殺気立つ。


 「私には貴女は一人前の女性には見えないのですよ。ただ・・・・貴女が自ら手掛けた、この薔薇園は素晴らしいです」


 この言葉に令嬢は些か気分を良くしたが直ぐに私を睨んだ。


 「それで・・・・その男を連れて来た理由は何?」


 まさか私との仲を取り持つ為?


 令嬢は傲慢な冷笑を私の背後に立つ男に向けた。


 対して男はグッと怒りを抑える素振りを見せたが・・・・私には未練がある様子だった。


 「私は貴女と、彼の仲を取り持つ為に来たのではありません」


 ただ・・・・・・・・


 「幼馴染みとして彼に“踏ん切り”をつかせる為に来たんです」


 「踏ん切り?」


 「えぇ、その通りですよ。マドモアゼル」


 いや、こう言いましょうと私は訂正した。


 「薔薇の庭園に住む“ローゼ・ブトン(薔薇の蕾)”嬢」


 この言葉に目の前に座っていた令嬢は完璧に機嫌を最悪にしたが、それは背後に居た幼馴染みも同じだった。


 「ハインリッヒ!彼女を悪く言うのは止めてくれ!!」


 「私は自分の感想を言っただけだよ。それから早く“例の物”を渡してくれないか?」


 「嫌だ!君は私に言ったじゃないか!!」


 『君を助ける』 

 

 「なら早く私の胸に彼女を抱かせるようにしてくれ!そうしたら私は彼女を連れてヴァエリエを出る!!」


 彼の言動を見るのも嫌なのか、令嬢は苛立ちを隠しもせず部下に顎で命じそうだった。


 しかし私は眼で制止を呼び掛け彼の説得に掛かった。


 「確かに君を助けるとは言ったよ。でも目の前の令嬢を君の胸に抱かせるとは言ってない」


 助けると言ったのは・・・・・・・・


 「君の命と・・・・その詩を書く才能だ」


 私は冷静に幼馴染みの青年に説いた。


 ところが青年は嫌だと叫んだ。


 「私は彼女を心から愛している!だから求婚したんだ!なら彼女も応える義務がある!!」


 「あぁ、確かに紳士的に君は求婚したね。それに対して令嬢は悪女みたいな断り方をした」


 この点は向こうに非があると私は言うが・・・・・・・・


 「君も“真っ白”とは言えないんだよ?」


 少し声のトーンを落として私は釘を刺した。


 それに青年---重要人物であるフランク・ファン・ポエットはギュッと拳を握り締めた。


 「良いかい?私は君の幼馴染みの前に守護騎士団なんだ」


 しかも所属は地方課の一端を担い「準軍事組織」の色を残す国境警備課だ。


 「だから本来なら管轄外だ。おまけに幼馴染みという関係も捜査から外される」


 それを引き受ける事が出来たのは・・・・・・・・


 「私が休暇中で、アルバン分署長も承諾したからだ。君は私だけでなくアルバン分署長の顔も潰すのかい?」


 昔なら・・・・いや今も君は他人の顔を立てる筈だ。


 こう私が言うとフランクは小さく頷いた。


 「・・・・マドモアゼル。彼が気持ちを落ち着かせるまで少し話をしましょう」


 「貴方に何を話すの?」


 令嬢は私が話し掛けると嫌そうに顔を歪めたが私は笑みを浮かべて内容を話した。


 「今回の“痴話喧嘩”に関する流れですよ。貴女も当事者の一人なんですから」


 守護騎士団のヴァエリエ分署で事情聴取するよりは・・・・・・・・


 「ここでやっておいた方が良いと思いますよ?」


 それとも・・・・・・・・


 「分署に行きますか?これは任意ですから拒否しても良いですが・・・・どっちが為になるか解りますよね?」


 「・・・・話しなさい」


 薔薇の蕾の令嬢は私の言葉に苛立ちを隠しもせず鼻を鳴らした。


 「ありがとうございます。では、私が今件の経緯を語りましょう」


 私は令嬢を見ながら語り始めた。


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