プロローグ
俺は今、たぶん夢の中にいる。
目の前には、華美な衣装を纏ったゴージャスな美女が微笑んでいた。
その均整の取れた身体はボン!キュ!ボン!とメリハリがあり、どこをとっても女性らしい魅力に溢れている。ウェーブのかかった金髪は艶々で手触りが良さそうだし、ぷっくりと肉厚な唇なんかはむしゃぶりつきたくなるほどだ。
そんな彼女が、唇をペロリと舐めながら俺ににじり寄ってくるのだ……間違い無く夢だ。夢の中に美女が出てきたのだから、俺がすべき事は一つしかないだろう。
美女に歩み寄り、まずは挨拶代わりとばかりに口付をかわすと、思った以上にリアルな濡れた唇の感触が返ってきた。見た目よりも小さなその唇の感触を訝しみながらも、甘く小さなサクランボを存分に堪能する。
思うままに唇を蹂躙した後は、当然、その柔らかそうな双丘だ。その美味しそうな果実は、衣装から零れ落ちそうなほどに豊かに実っている。
おもむろに果実を鷲掴みしたはずが、やはり返ってくる感触は見た目よりも小さすぎる物であった。確かに柔らかくは有るが、これではおっぱいでは無く、ちっぱいだ。
「……なんて残念な」
思わずそう呟いた直後、俺の脳天に衝撃が走る。
「人の胸を掴んでおいて残念だなどと、滅びれば良いのです」
意識が闇に沈む中、少女の呟き声が聴こえた気がした。
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酷く痛む頭を押さえて、俺は身を覚ます。
「…………ん、朝か……」
「おはようございます、兄さん。良い夢は見れましたか?」
この真っ白な少女は、俺の本当の妹ではない。一緒に暮らすのに不都合の無いよう、表向きそういう事にしているだけだ。
いわゆる偽妹という奴で、義妹ですらない。それでもこの世界における、俺の唯一の身内といっていい存在であった。
「凄く良い夢を見てたはずなんだけど……クソッ、駄目だ、思い出せねぇ! なんか頭もガンガンするし、なんだこれ!?」
「それはきっと、兄さんが寝過ぎなせいなのです。今日こそ、ちゃっちゃと起きて働くですよ」
そう言って俺の毛布をはぎ取る少女の右手には、黒光りする鉄の塊が握られている。
「…………なあ、お前が右手に持ってるのはなんだ?」
「これはフライパンという物です。いくら兄さんでも、これくらい知ってるですよね? 何です、まだ寝ぼけてるですか?」
「そういう事じゃねぇよ! お前、それで俺の頭殴っただろ!?」
「何を言ってるです。私が兄さんを殴るわけ無いじゃないですか」
ニヤニヤと笑う彼女を見る限り、俺の頭痛の原因はこいつで間違いない。
こいつ……年々ふてぶてしくなりやがって。出会った頃は、もっと素直でチョロい……いや、いい子だったのによ。
俺は、この世界にきてからの事を思い出しながら、どこで間違えたのだろうと自問自答を始めたのだった。
新作開始しました。他の連載もありますので、不定期連載になるかと思います。不評なようなら、早めに打ち切りもありえます……。それでも構わないとお読みいただけるなら、作者の筆も進みますので、どうぞよろしくお願いします。