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誘意夜桜  作者: 化火富 藍月
現の世界
98/100

雨音は静寂の海に消えて

「 アイスコーヒーを一つお願いします 」


店員はかしこまりましたと言うと奥の方へと去っていった。


わたしは深くソファに背もたれ、横にカバンを置き、愛読の小説を嗜む。


やっぱりなじみの喫茶店はおちつくなぁ。


喫茶【ビレイグ】


ここのマスターとは父親が古い仲でコーヒーを一杯サービスしてくれる。しかも私だけ全商品二割引き。


ふところがさびしい私でもほぼ毎日通える唯一無二の憩いの場である。


「 アイスコーヒーお持ちしました 」


わたしは運ばれてきたアイスコーヒーを片手にストローでゆっくり飲みながら外の景色をチラッと見た。


外はどしゃ降りの雨。まだ帰れそうもないか。

白百合は補習で一緒に帰れなかったし。


アイツいないとわたしの日常って結構、静かなんだなぁ。


ふと柄にもなくそんな事をおもってしまった。

わたしは口からストローを離し、アイスコーヒーの氷をストローで混ぜ始める。


そういえば、今朝は一体どんな夢見たんだっけ?


ここ最近、変な夢ばっかり見るんだよなぁ。

水中を彷徨ったり、平原を歩いたり。

どれもハッキリ覚えてんのに。


今朝の夢だけは思いだせない。なんでだろ。


軽い疑問があたまを支配したその時


カランッコロロン


入り口が開いた時に鳴る呼び鈴が店内に響いた。


一瞬、体がビクッと震えた。ビックリした。


わたしは入り口付近に視線を巡らせる。

すると向こうのテーブルでコーヒーメーカーをつついているマスターが笑顔で軽い会釈しているのが見えた。


誰だろう。


たまたまその人物がいる角度は観葉植物の葉で見えなかった。


ただ、マスターが何やらその人物となにかを話し込んでいる、そんな感じだったのが見えた。


しばらくするとマスターはふたたびコーヒーメーカーをつつき始めた。


話が終わったのかな。まぁいいか。


マスターにも仲のいい知り合いや客の一人や二人いるだろうと思って気にしなかった。


わたしはふたたび小説の世界にのめり込んだ。



その時



「 ……相席、よろしいですか? 」



水のように清らかで透き通った声が耳にこだました。

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