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誘意夜桜  作者: 化火富 藍月
現の世界
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それは夢か、それとも幻か


あれ......ここ...は......。



見たことのない世界だ。


宝石をばらまいたように煌めく夜空の星たち。

地面は芝生で生い茂り、果てが見えない程に広い。



どこだろう......ここ。 あれ...私......前に。



頭の中がモヤモヤする、まるで脳みそが霧でつつまれているみたい。


でも今はとにかく......。


とにかく場所を移そう。今は...とにかく......。

たしか北極星の位置で方角がわかるって聞いたことがある。北極星があるのは北だから......。


私は夜空に視線をばらまいた。


すると


「 ......................................................え? 」


北極星が......ない!? いやいや、そんなありえないって!?


私は見間違いだと思い、何度も何度も北極星を探した。


でもやっぱり結果は同じだった。


「そんな......」


どうしよう、方角が分からないんじゃあ、進みようがないよ。


だってテレビで見たサハラ砂漠とかを連想させる程の広さだもん。


そもそもいつもある星が無いってどういうこと?

ここは別の世界なの??


......仕方ない。あては無いけどとにかく歩こう。


何もしないよりはマシだよね。きっと。



÷<☆>÷



あれからおそらく一時間がたったと思う。

私の見ている視界は以前変わらない。


行けども行けども草、草、草。いい加減いやになってくる。


建物はおろか、人も、生き物すら見当たらないんだもん。


苦労してわかった事は一つだけ。

ここには何もないという事実のみ。


本当、怖いくらいに何も無い。


「 もう疲れた、少し休もう。」


私は芝生の大地にドサッと仰向けに倒れこんだ。


目の前には満点の星空。この景色もだいぶ飽きてきた。


ここはどこなんだろう。なんで私はここにいるんだろう。どうしてこうなった?。


などと疑問の雨が止まない。


そんなことを考えているうちに極度の疲れからかすさまじい睡魔が私を襲った。


疲れきった私に抗う気力はなく、そっと目を閉じて寝てしまった。温かい水の底に沈んでいくような心地いい眠りだった。


危険な動物はいない。だから少しの間だけ、と自分にあまえながら。



+<☆>+



ピピピピッ!ピピピピッ!!



朝を告げるめざましの音が容赦なく私の耳に響いてきた。


「 う〜ん......あと三分........」


と言いながら私はめざましのスイッチを片手で押し、また寝ようとする。朝は憂鬱だ。


しかし


「 おっはよ〜!! 露火ちゃん! 」


白百合が起こしに来る。この目覚ましに勝る一声は私の重いまぶたを一瞬でパチっと開かせる。


多少のイライラはあるけど。


「 白百合......おはよ 」


私はゆっくり上体を起こし、あくびをしながら挨拶を返す。だがまだ少し眠い。珍しいなぁ。


私はすぐ降りるから先に降りてて、と白百合を下の階に促した後、タンスを開いて制服に着替える。


スカートにカッターシャツ、そして上着を着用したら髪をくしでといて、最後に鏡で身だしなみを整える。


これが私


【露火 真狐兎】(つゆび まこと)


の一日の始まり。


なんだか変な夢を見ていたような気がするなぁ。

まぁいいか。


私は部屋のドアを開け、階段を降り、てっとりばやく朝食を済ませて、玄関で指定靴を履く。


玄関のドアを開けると白百合は家の前で待っていた。


おまたせ〜っと一声かけて、雑談を交わしながら学校に向かう。


今思えば、この時が私にとって至福のひと時だったなと思う。平凡そのものだから。


でもこの平凡は長く続かない。


私の日常と平凡はある夢によって壊される。

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