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誘意夜桜  作者: 化火富 藍月
現の世界
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泡沫の現



「 ……え? 」



私の目に映ったもの、それはマンガやゲームでしか見た事の無い景色だった。



赤い飛沫がかかった壁やグラウンド、そして窓。



私は瞬時に悟った、この赤いのは人の血だ。



しかもその血は



私を中心に飛び散った跡みたいだ。



瞬間



嫌な予感が私の頭を支配した。



私は小刻みに震える手で、おそるおそる自分の腹部を触る。



湿っていた、水を含んだスポンジみたいに。



そしてその直後、ジワジワと濃い赤色が制服に滲んで、地図にある地形のような模様を広げた。



触ったあとの手のひらは、まるで朱肉に押し付けた後のように……



「 血で赤一色だ 」



口内に広がる鉄の味。

口から漏れた水は私の足元を赤く染める。



膝に力が入らない、地面が押し寄せてくる。



私はそのまま、向かってくる大地を右半身で受け止めた。



違う。



私が受け止めたんじゃない、逆だ。


受け止められたんだ……私が…大地に……倒れ込んで。



頭の中に鮮明な映像が流れこんでくる。



一本のロウソク。



そのロウソクの火が今にも消えそうだ。


揺らいで揺らいで、今にも消えてしまいそう。



意識が遠のく。瞼が重い。このまま寝てしまいそう。



そうか。



そのロウソクの火が…私の命……て、こと……か。


瞼らどんどん重みを増す。視界も霞んでゆく。



そんな中、私はふと思い出したように気づいた。



「 白百合……」



あいつは………アイツは……無事……なの…か?


私は重い頭を上に少し傾ける。


すると白い絹のような糸が視界の端に映った。



髪だ……アイツの……白百合…の。



どうせ眠るのなら、と思った私は火事場の馬鹿力に頼る事にした。



私は首に意識を集中する。



重い。ダンベルと見間違うほどに。


でも負ける訳にはいかない、アイツの無事を確認するまでは。


ゆっくりと曲がる私の首はさながらクレーンのよう。



あと少し……あと少…し。



…………………………。



赤い水たまり



白百合は浅い赤色の水たまりにその身を沈めていた。







「 ああアァあアァあぁァああァァァ!!! 」



なんで、 何で!! 何で!! 何で!! 何でなの!!



「 白百合!! 白百合ぃぃ!! 」




私は死ぬのを忘れ、彼女の名を呼び続けた。




すると




「 ? どうかしましたか? 露火ちゃん 」






「 ……………………え? 」



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