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達成と運命
机の中央を小さく占領する紙とペン。
当主達は静かに決断をした。
「いいだろう、俺はアンタに一族の名を預ける事にする」
一人の当主が組んでいた腕を解き、ペンに手を伸ばす。
「……では私達も書かせて頂きましょうか」
緑髪の少女は場の雰囲気を見透かし、他の当主達を署名に誘う。
紙とペンは時計回りに横へ横へと移り変わり、朱音丸の位置で止まった。
朱音丸は眉間にシワを寄せながら少し考えたが、夜色金の魅力と価値に抗えず、書に名前を施して隣の当主に紙とペンを流す。
その後も署名は難なく進み、ついに全員の名前が書に記された。
夜は全員のサインが書かれた協定書をもう一度目で確認した後、傍らで跪く夜津葉にそっと渡す。
夜津葉は頭を深々と下げて当主達に一礼を交わすと、足下に置いてある黒いアタッシュケースにしまった。
夜は感謝の言葉を重みのある声量で当主達に丁寧に伝えた。
その直後
「ところで “定命” はいつ行われますの?」
聞いたのは花樹という当主だった。