夜色金
「あんたら、ちゃんとコレを調べたのかい? 金属の結晶構造は? 強度は? 材質は?」
「……無論、できる限りの解析は済ませています。治金技術は日本のものでした。刀身の層が幾重にも重なっていましたから。強度は恐ろしく頑丈。ニトントラックに轢かれても傷一つ付きません。そして材質ですが……」
緑髪の少女は表情を曇らせる。
そして少し重い口調で再び言葉を紡ぐ。
「僅かですが……【夜色金】が含まれていました。」
「 ! 」
咥えて上下に口動かしていた朱音丸のキセルがピタッと止まる。
目を見開き、驚きをあらわにしていた。
約二秒間、朱音丸の周りの空気が真空になる。
「……量は?」
「およそ0.2gです」
朱音丸下を向いて顎に手をつけ、考え始める。
そして短い沈黙の後、再び緑髪の少女の方を向く。
「……笑えないねぇ」
朱音丸の言葉には怒気が混じっていた。
体から近寄りがたいオーラを放ち、眼差しは鋭く尖っている。
他の夜を除いた当主達も同様だった。
まるで重火器で囲まれた部屋の中でタバコを吸うような危うさの、一触即発の雰囲気が部屋を支配した。
「夜色金はウチじゃないと作れない、ウチが先代から継いだ 【誘意流 金合術】を使わない限り、絶対ね」
「……その筈ですが」
緑髪の少女は言葉を詰まらせた。
そして間もなく、夜が低く挙手をする。
「……その事について報告があります」