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枝と葉達
「古くからこう言い伝えられて来ました」
一度振るえば地が泣き、空が応える。
二度振るえば音が砕けて、無が生まれる。
三度振るえば死神に睨まれる。
何者も触るべからず
さもなくば己の影が蝕まれん。
「 “忌み具” 香具里ノ凪影
代々管理を任されているのは貴方の “枝” 達ですよね……【朱音丸 大火】さん」
当主達の視線は紅髪の少女に注がれた。
「確かに……そいつぁ、ウチが管理しているもんだ」
朱音丸と呼ばれた少女は口に咥えたキセルを一息に吸い、大煙を吐く。
そして裾の奥から錆びついた一本の鍵を取り出し、テーブルの上に放り投げた。
「それが封印してあるのは家の地下倉庫だ、鍵はそれ一本だけ、朱音丸家当主から代々受け継ぐ秘鍵だ、ちなみにウチは過去に二度しか開けてない」
朱音丸は鍵を渡す事で身の潔白を証明しようとしているのだろうと全員が理解する。
無駄に言い訳を並べるよりも行動で示すのが朱音丸 大火という当主のやり方である。
「もっとも、それは今も家の地下倉庫にあるけどねぇ」
「……どういう事ですか?」