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ババ抜き
張り詰めた空気は一瞬で消し飛んだ。
その場にいた全員がいっせいに入り口の扉に視線を向ける。
澄んだ藍色の瞳とマシュマロのように白い純白の肌。
そしてその存在感をさらに至らしめる腰まで伸びた美しい藍髪。
会場にいた警備員は全員、歓迎の拍手で夜を迎えた。
「へぇー、ようやく御当主様の出ましかい」
紅髪の少女は口隅を大きく吊り上げ、口に咥えたキセルをクイクイと上下に揺らし、好戦的な眼差しを夜に突き立てる。
しかし夜は気にせずスタスタと自分の席へ移動する。
他の当主達はその様子をビデオカメラで撮影してるかのように目で追った。
席へ着くなり夜は尖った口調で紅髪の少女に話しかけられた。
「あんたが新しい当主様かい、顔を見るのはこれが初めてだねぇ」
テーブルには相変わらずクロスした足。
紅髪の少女は悪びれる素ぶりは一切見せない。
そしてその態度に煮えを切らし、一人の若い警備員が紅髪の少女に近づき、説教を始めた。
「キミィ! 早くその足をどけなさい!! さっきから何だ!! キミのその態度……」
警備員の顔面に拳がめり込んだ。