対面
「夜様はまだいらっしゃられないの?」
「先程ご到着なされたので今しばらくお待ちを」
議会は凍てついた空気に包まれていた。
半径ニメートルの円状の黒いガラステーブルを囲み、しびれを切らす分家の当主達。
行儀の良い立ち振る舞いを見せる者もいれば、テーブルにクロスした足を乗せるような者もいる。
しかし、当主達の後ろで鎮座する監視員達はその事に対して誰も指摘はしなかった。
一族の分家は皆、個々の特異な技術を所有し、独自の進化を遂げた者達ばかり。
それを派閥分けし、その中で最も優れた力を持つ者が各分家の当主に選ばれる。
故に、短期な者、生真面目質な者、どちらでも無い者など、多種多様な血族なのだ。
そしてクロスした足をテーブルに乗せている紅髪の少女は背もたれている椅子を後ろへ半倒しにし、後ろの監視員を睨みつけながら言った。
「なあ、もう帰っていいか? あたしゃあ、カカシみたいに待ちぼうけするのは性に合わないタチなんだよ。」
紅髪の少女は居心地が悪そうにこぞって不満を漏らす。
しかし居心地が悪いのは少女だけでなくその場の当主全員だった。
それもその筈
今まで議会に参加した当主達は夜を見たことが無かったからだ。
理由は今まで議会の参加を夜が全て断っていたから。
もちろん、それは正当な “理由” があっての事だったのだが。
顔を見せない当主というのもいかがなものかと皆、心の底に秘めていた。
そして、その思いが皆の口からこぼれそうになった時、会場の重い扉が開く音がした。