安地
「………」
不意に動きを止め、噴火寸前の山を見据える夜。
「何してんの! 噴火に巻き込まれるわよ!!」
「……ん」
夜は一言返すと夕闇を追うように走った。
三人はもうすでに山を出ている。
後は安全地帯までひたすらに走るだけだった。
山はとうに噴火している、灰色の巨大な煙が地を芋虫のように這い進み、ポップコーンのように大小様々な岩が弾け飛ぶ。
夜達は少しでも危険を減らす為に、森の中を風のように走り去っていく。
そんな中でゴッという鈍い音を夕闇の耳が捉える。
振り返えれば朝が倒れている、どうやら尻に弾丸のように小石が直撃したようだった。
夕闇は思わず吹き出して、朝を罵倒しはじめる。
「ダッサ!!」
朝は目くじらを立てて、怒りをあらわにするが、今はそれどころではないと飛び起き、また走りだした。
復讐するのは帰ってから、と誓ってから。
一方の夜は感覚を研ぎ澄ましていた。
先程香りのように漂ってきた僅かな気配を警戒しての事だった。
しかし、ものの数秒後には靄のように薄れ、消えてしまった。
夕闇も走りながら背後に感覚のセンサーを放っていた。
だが特に何事もなく森を抜けて、町の入り口に出た。
ここまで来ればもう石は降ってこない。
後は分家の夜津金一族が落ちた隕石を回収後、起きた被害の修復をする。
夜達は町の入り口に立った。
今は深夜の四時頃、入り口には三人の仮面を被った者達が待っている。
母親の部下達だった。