脱出
「ピギャァァァァァァァ!!」
瞬間、三人の鼓膜に稲妻が走る。
うるさいなんて言葉がかわいく思える程の超高音。
まるでサイレンを耳元で聞いているかのような死の断末魔。
三人は今まさに、音の海に沈んでいた。
耳を塞いでいても脳髄に直接響くキンキンとした痛みに思わず膝を着く朝。
完全噴火まであと三十秒。
朝は目をそっと閉じ、己の死を覚悟する。
しかしそれと同時に朝は腹部に重い衝撃を感じた。
肺の中の空気が圧縮され、朝の口から漏れる。
朝は何が起きたのか理解する間もなく遥か後方に吹っ飛ばされた。
やがて地面をゴロゴロと転がり、体を木に叩きつけられてようやく何が起きたのか理解する。
夜が朝を蹴飛ばした。
理由は明白だった。
音の海から解放するため。
荒っぽいやり方だが合理的な方法だった。
しばらくして同じように夕闇も飛んできた。朝の上に。
不幸にもみぞおちに直撃し朝はその場にうずくまる。
夕闇は慌ててごめんと謝るが朝にとってはもうかやの外だった。
しばらくして夜も飛んできた。朝の前に。
ジャンプして来たと言い張る夜に二人はひどく驚いた。
しかし状況が状況なだけに三人は脱出を急いだ。
完全噴火まであと十秒。