死線
山は怯えるように身震いしていた。
「急いで下山しよう」
ほとんど垂直な急斜面を雪崩のいきおいで駆けていく夕闇達。
三人は立ち塞がらんとする暗い木々を煙のようにゆらゆらと避わし、ゴツゴツに隆起した地面をバッタばりのジャンプでヒョイヒョイと下りていく。
数分もしない内に三人は山の中腹に辿り着いた。
程なくして、山の反対側から噴火の産声は上がった。濁った灰色の噴煙が地表を這い進み、あっという間に夕闇達のいる反対側の地表を埋め尽くした。
「火山岩に気をつけて」
夕闇は上空に注意を促した。
山が噴火した場合、煙と共に地中から大量の岩石が噴出する。この岩石は空から無数の岩雨となって降り注ぐ。
民家を破壊し、人々を死傷する破壊の雨となって。
人間の人体に当たった場合、拳大の石でも頭部に当たれば絶命、もしくは致命傷は免れない。
だがしかし、幸いにも山の近くに民家は無く、街にもギリギリ届かないと夕闇達は踏んでいた。
このまま行けば、なんとか間に合うと夕闇達は油断をあらわににしていた。
その時だった。
後方に居た朝の目にキラリと月光を反射する何かを捉えた。
朝は瞬時に夕闇を呼び止める。
しかし夕闇は坂道で急に止まる事は出来なかった。代わりに咄嗟に体を横にそらす。
間も無くその何かは夕闇の右肩をかすめる。
三人は徐々に勢いを緩めてその場に止まった。