早過ぎた代償
「世話のかかる子達だわ」
展開された魔法陣が障害物となり、わずかな時間が生まれた。
夕闇も朝もそのわずかな時を見逃さなかった。
黒い手の塊を二人で挟む。
間もなくして二人は封印術を発動した。
二人の右腕が碧色に発光する。同時に、腕の神経が焼き切れるような激痛が二人を襲った。
二人の顔は苦痛に歪む。しかし今は耐えるしかなかった。
黒い手はゆっくりと少しずつ霧散し、球体状に固まっていく。
大体八割が封印に成功していた。しかしすんでの所で中断をよぎなくされる。
朝は封印を中断し、とっさに頭をふかく下げた。
すると朝の頭上を白刃がとおり過ぎた。白刃はそのまま一方通行に飛び、後ろの木に突き刺さる。
球体は瞬時に砕けた。ふたたび無数の黒い手が
襲いかかる。
「どこから!?」
朝はまわりに視線を流した。しかし人影一つ見当たらない。朝達は夜目が効く。
大方、無数の手の一部が投げたのだろうと朝は
予測した。
たが、今はそれどころではなかった。
「何だアレは!?」
黒い塊から黒い人型が次々に姿を現わす。
顔も無ければ声も発さない。
動く人形と大差ないと言った存在感だ。
人型は二人に容赦なく襲いかかった。
殴りかかったりする者がいれば、石を投げつけてくる者もいる。
さっきよりも厄介な状況になってしまった。
人型は塊から溢れるように生まれる。
二人はあっという間に囲まれてしまった。
「どうする?」
背中合わせに朝は質問した。
「......さあ?」
夕闇は両手を挙げ、手に無い白旗を振った。