蛇龍
「何だ? 今の音」
突然の轟音が朝の耳に響く。
音源は山の麓からだった。
自分からさほど遠くない場所。
朝は慌てて重い体を起こし麓まで歩き始める。
「嫌な予感がする」
▼◆▼◆▼◆▼◆▼◆▼◆▼◆▼◆▼◆▼◆▼
「捕まえた」
足首をひねり、関節を外す夕闇。
グギッ
という骨がきしみ外れた鈍い音がした。
しかし
「残念だったなぁ」
ピキキッグギッ
再び骨がきしむ音がした
だが、今度は骨はまるような音だった。
男は捕まれた足を右回転
隣の木に激突させよう回した右足だが
咄嗟に夕闇は手を離し、難を逃れる。
瞬間
夕闇は思い出す。
蛇は卵を飲み込むさいに、自ら関節を外す生物
なのだと。
「体が柔らかいのね、あなた」
「俺は蛇の魂と同化しててなぁ
初めはこんな体じゃ無かったんだが
戦っていく内に体がコツを掴んでよぉ
今じゃあこんな事も出来るぜぇ」
男は右手の腕から指の関節を一瞬で全て外し
一瞬で全ての関節をはめた。
その様はまるで糸で操る人形のような動き。
「ヘビって........もしかして」
夕闇は慎重気味に尋ねる。
「ああ、バジリスクだ!」
見た者を石化させるという蛇龍。
その魂と同化するという事は少なくとも
人間を捨てるという事。
「ふーん、まぁ私には効かないからいいけど」
夕闇は風のように流す。
それと同時に一歩後ずさり。
「それは良かったな!」