鋼の覚悟
藪から勢いよく飛び出す夕闇。
ゴロゴロと横転を繰り返し
木葉が付着した頭を慌てて起こす。
目の前には眉間を貫かんと直進してくる白刃。
咄嗟に刃の横を打撃。
結果、刃の矛先はわずかにずれ、頬を薄く切り裂く。
夕闇はすぐに剣を両手ではさみ
横からの連撃をふせぐ。
「くぉんのお~~!!」
全力で剣を押さえる夕闇に対して
男は腕の筋肉を連なる山脈のように隆起させて
押してくる。
ポタリポタリと落ちる血のしずく。
地面は音もなく吸い上げる。
綱引きのような力の押し合いは七分続いた。
「いい加減、くたばれよぉ!!嬢ちゃん!!」
苦笑しながら夕闇はやだねと返し
男のみぞおちを蹴り上げた。
ぐっという声を漏らしながら後ずさりする男。
夕闇はすぐに脱兎の如くひた走る。
しかし
足元に白刃に光る刀がダーツのように飛び刺さる。
間髪入れず
歩みをとめた白い足下にさらに木の枝が刺さる。
連続して飛んでくる木弾を避けていく内に
いつの間にか元の位置まで戻ってしまった。
「しつこいわねぇ!」
左眉をピクピクと動かしながら
苛立ちをあらわに、思わず本音が漏れる夕闇。
男のダメージはすでに霧散しており
今にも襲いかかってきそうな気迫に満ち溢れている。
首をポキパキ傾け鳴らしながら近づく男に対し
夕闇はふと何かに気づいて頬に汗を一滴垂らす。
男の目は邪眼に変わっていた。