蛇は血をすする
「........これは失礼したわ」
大量に舞う土煙。その向こうに光る赤色の瞳。
「チッ......デジャブだぜ」
目の前の光景にローブの女の姿が重なる。
男はおもむろに苦虫を噛み潰したような顔をした。
「お前、あの女の仲間か?」
「あの女?」
唐突な男の問いかけに少し戸惑う夕闇。
一瞬、夜の事かと思ったが、おそらく違う。
夜ならば敵をみすみす逃がす事はしないと
夕闇は知っているからだ。
ならば男の言う女とは
「誰の事?」
「........いや、なんでもねぇ」
男はそれ以上、聞くのをやめた。
これ以上、自分が相手を仕留め損なった事実を
思い出したくないからだ。
「そんな事より、お嬢ちゃん、お前何者だ?」
下げていた刀を肩に乗せ、質問を夕闇にほおる。
「一般人がこんな山奥に来る訳ねぇ
しかもこんな夜中によぉ」
刀を乗せ、リラックスしながらも男は
警戒の意を目に宿しながら質問の答えを煽る。
「そうね........“鷹”......かしら」
「鷹?」
眉を片方つりあげ、疑問を顔に張り付かせる男。
「ええ、目の前の“蛇”を狩る........ね」
「........なるほどねぇ、そういう事か」
男は目をつむり、口元を緩ませながら納得した。