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血蛇
「野郎、どこへ行った!」
カチャン
鍔が辺りに鳴り響く。
ドォン
音がやむ頃にはすでに目の前の大木は
斬った者の足元によこたわっていた。
「この俺が........二度も」
柄をにぎる右手が震える。
怒りが男のあたまの中を侵食していく。
瞬間
男の顔に拳がめりこむ。
殴ったのは殴られた本人。
「ふぅ~~~、落ち着け、落ち着つくんだ俺」
吐いた息とともに膨らんだ怒りがしぼむ。
男は冷静さを取り戻した。
「血の匂いだ、血跡を辿ろう」
男はかすかに漂う血臭をたよりに
道なき道を踏み歩く。