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返答
乾いた溶岩のように黒い雲が月を隠す。
山は影に侵食され、何者も映さぬ黒に染まる。
同時に私は周囲の木々をいっせいに燃やした。
私の能力で。
炎は猛り荒らぶる獣の如く
周囲の暗い木々に襲いかかり
伝染病のように次々と他木を火で染めていく。
その光景をのんびりと見ていた私は
ゆっくりと後ろの方へ歩き、火の届かない
崖の近くに腰をおろした。
「絶景かな♪絶景かな♪」
私はあぐらをかきながら鼻歌を口ずさみ
目の前の大火事を花見の気分で愛でた。
ここにジュースやお菓子があれば
どれほど最高だろうか。残念で仕方ない。
私の気分が高揚している理由は至って単純
普段できない事をする分には気持ちがいい。
ただそれだけだ。放火魔などではない。断じて。
そしてその光景が続いた数分後には
先程まで不気味と暗黒で身を包んでいた森は
熟したトマトのようにまっ赤な大火に沈み
山の中腹から数キロを赤い光で照らす灯台となった。
「これは反撃の狼煙よ!!二人とも早く来なさい」