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誘意夜桜  作者: 化火富 藍月
現の世界
43/100

行きも帰りも地獄

妖しい紫光を放つ凶刃は

絶望への叫嘆ともとれるような

重苦しい咆哮を周囲に轟かせた


木々が忙しなくざわめき

大気は怯えるように揺れている。


「...............マジ?」


夕闇は目の前の光景に

ただただ苦悶の表情を浮かべていた。



◆▼◆▼◆▼ 遡ること一時間前 ▼◆▼◆▼◆



「三人共、

最初の仕事です、すぐに準備をなさい」


夕闇達の母親【花月】が部屋の襖をスッと開け

居間にいる夕闇達を呼びかけた。


夜は本を読み

夕闇は畳にダラリと寝そべり

朝はテレビを見て爆笑している。


「もうちょっと後で......」


朝が背中越しに遅延を要求するするが


「聞こえなかったかしら」


花月は後ろから朝の左肩を力強く握り締め

圧倒的な存在感で物言えぬ空間を作り出す。


瞬間、朝の顔から笑顔は消え去り

冷や汗が滝のように流れ

顔は恐怖で塗り固められている。


蛇に睨まれた蛙である。


「分・かっ・た・わ・ね?」


目を横に流し

恐る恐る振り向くと ......母は笑っていた

しかし紫色の目は一切笑っていない

行かなければ殺すと目が訴えていた。


「はい、是非とも行かせて下さいお母様」


朝は目の前の大魔王に忠誠を誓ってしまった。


「あらぁ、頼もしいわぁ♪

他の二人も異論無いわねぇ?」


弟の心を睨み殺した紫色の瞳が夕闇と夜の方へ

流れ移る。


「......私はいつでも」


本をパタンと閉じ

花月に出撃可能を伝える夜


「わっ私は......」


不安気に言葉を繋ごうとした夕闇だったが


「ん?」


後頭部に視線の槍が突き刺さる。

重さ三百キロの言葉が乗しかかる。

女の勘がヤバいと言っている。


「なっ...な~んて、あはは......」


夕闇は目にも止まらぬ速さで飛び起き

後頭部を右手で掻きながら

冗談だと言い張る。


「なら良かったわぁ~貴方達は優秀ねぇ

まぁ断ろうものなら力づくで、だけどねぇ」


物騒な事を言っている花月の顔は

混じりっけの無い純粋な笑顔だった。

だがしかし

その笑顔が二人の恐怖を一層駆り立てた。


「じゃあ時間も無いしスパッと説明するわぁ」


花月は笑顔のまま三人に説明を始めた


「場所は家から北東にある山よぉ、

名前は


【境界山】《きょうかいせん》


今から三人はそこで暴れている


【赤沙汰ノ嘶鬼】《あかさたのいななき》


を退治してもらいます

あまり高くない山だからすぐに見つかるわぁ」


だったら自分達で行けよ......

そう思う夜以外の二人だった。


「じゃあ早速、行ってらっしゃい♪」


嫌だぁ......

そう思う夜以外の二人だった。


「無事帰って来れたらぁ♪お母さんのぉ♪

コスプレ衣装を披露してあげるわぁ♪」


いい年して何を......

そう思う娘達三人だった。


三人は怪我するか野宿するか

思わぬ所で決断を迫られたのだった。

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