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呼ばれる者
「.....油断が過ぎたねぇ」
まぁ
ゆっくり楽しませてもらうよ、クスクス
その者は静かに嘲笑う
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「情報は?」
男はコツコツと革靴の音を踏み鳴らしながら
斜め後ろにいる部下に問いかける。
「はい、やはり座標は【あの桜】でした。」
白髪の少女はコンピューターの様に
感情の込もっていない声色で答えた。
「そうか...やはり間違い無いようだ.....。」
男は左手の親指と人差し指でハット帽の
襟を軽くつまみ、表情を隠すよう下へ傾ける。
「確認は済ませた」
間違いは無い
ならば.....
男はつまんでいた帽子の襟をそっと離し
小さな声で一言呟いた
「これからが.....“始まり”だ.....。」
じきに“覚める”
そう呟くと二人は闇に溶け込む様に
スゥッと消えて行った。