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間に合った
緋色の衣は跡形も無く破れ
蒸発するように消え去った。
しかし荒れ狂う竜巻は勢いが止まる事を知らず
そのまま直進し向かいの建物へと
その巨体を走らせる。
「夜様...」
「...まだだよ」
二人は木の上で竜巻の様子を眺めている
竜巻は夜津葉の術で誰にも見る事は出来ない
ある程度の実力を持つ者を除いて
「絶好球♪絶好球♪」
緋衣は簡単に言えば自分の姿を隠す技だ。
竜巻が当たる瞬間
朝は既に横へ避けていた。
竜巻の前にかすり傷だらけの朝が立ちはだかる
そして緋色の蔵王を両手で持ちかえ
正面から竜巻をぶった斬る
と同時に蔵王が赤く輝き凄まじい炎風を
巻き起こす。
竜巻は上空に方向を変え、逃げるように
空へ昇って行く
中の刃片は蔵王の炎で殆ど溶けていて
竜巻は弱々しく飛んでいる様にも見える
その時
ィィィィィン
楽器の弦を一本だけ弾いた様な綺麗な音が
朝の耳に響く
「ふぅ~間に合った~~」
ドッとその場に後ろから倒れる朝
その顔は少し嬉しげで疲れ気味だった。
もう分かったのだ
これから起こるであろう事が朝には
そしてそれは案の定すぐさま起こった。