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今俺に出来る事
崩れ落ちた斧の刃片が星屑のように宙に舞い
鈍い光沢を帯びた銀色の吹雪となって
朝を取り囲む
「ッ!」
これは...
避けきれない
回避不能と判断した朝の次の行動は速かった
「多少の傷は受けるが仕方ない」
一瞬だけ蔵王を使ってすぐにまた術をかけ直す
朝は右手に持っている緋色の短刀を横に一閃し
腕に力を込めた
「火爪【ひづめ】」
瞬間緋色の刀身からルビーのような輝きを放つ
真赤の炎が刀身から溢れんばかりに
揺らめいている
やがて
真赤に輝く炎は刀身に小さな煉獄を創る
その煉獄の中では火は止む事も尽きる事も無い
常に真赤の灼炎がうねりと爆発を繰り返す
「親指程だけど今はこれで十分十分」
使うのは一瞬だけ
それ以上は目立ち過ぎてしまう
朝は刃片の吹雪をヒョイヒョイと避わしながら
後ろへ後退し次の攻撃が来る前に
【火爪】を放つ構えを取る
「今俺に出来る事は時間を稼ぐ事、そして」
この街に住む人々を一人残らず守る事!
右足を前方へ、左足を後方へ
放つ右腕は肘を曲げ手首を額の位置に固定し
左腕は肘を曲げ左膝の少し手前に置く様に固定
後は自らのタイミングで見極め放つべし
そして今
そのタイミングは訪れた