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誘意夜桜  作者: 化火富 藍月
誘う夜桜
29/100

世話のかかる弟

「影が...割れてる...」


朝は自分の影が異様な状態で

地面に張り付いている事に気づき

しばらくその場に立ち尽くしていた


今、朝の足元から伸びている影は

まるで薄氷を踏み潰した時の様なヒビが

全体に広がっている状態である


「やっと気づいたわね」


夕闇は遅いと言わんばかりに呆れた声で

朝を小馬鹿にすると


影のヒビがピシピシと音を立てながらさらに

大きく深く広がっていく


そして


バキィィン


というガラスが割れた様な音と共に


夕暮れ色の長髪を風に靡かせ

赤色の瞳でこちらを見つめながら

颯爽と影から歩いて出てくる夕闇


肌は茹で卵の白身のように白く艶があり

まつ毛は長く、鼻筋は通り、目が大きい

体も引き締まっており非常に美しい


朝はいつも見ている普段の姉とは違う姉を見て

少し驚いた様子でその場に呆けている


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