どうしよう
朝は来た道をすぐに戻ろうとした
その時
ガラガラと数メートル先の岩肌が剥がれる様に
雪崩のような勢いで崩れ落ちた
朝は爆弾にも等しい轟音と大気を圧迫する衝撃
に驚き、慌てた様子で体ごと後ろを振り向く
「.....土砂...崩れ?」
崩れ落ちた岩肌以外特に変わった所は無い
何が起きたのかよく分からず
困惑している朝だったが
次の瞬間
重くベタベタと纏わり着く底無し沼の様な怨みと
全て焼き尽くすかの様に激しくドス黒い殺気が
朝の後ろ髪をそっと撫でた
「!」
朝は雷の如く素早く後方を振り返ると同時に
右手に持っている蔵王で鋭い一閃を放った
ガィィン!!
硬い金属同士がぶつかりあい
ギギギと音を立てながら
オレンジ色の火花を散らしている
「.....黒い...斧?」
朝が思わず口から言葉を漏らすと
その黒い斧は凄まじい剛力で朝を
遥か後方まで凪ぎ飛ばした
「うおっ!!」
まるで台風の様な凄まじい風圧で
朝は後ろに吹き飛ばされながらも
空中で体を捻り何とか
衝撃を和らげつつ着地する事に成功した
斧はその後その場に鎮座している
「.....」
何だぁありゃ
趣味の悪いデザインだな
呑気にそんな事を考えながら
朝は斧に摩訶不思議と敵意の入り混じった
視線を送り観察するが一向に正体が掴めない
分かった事はあの斧がとても危険で尚且つ
まるで生きてるかの様に動く事
そして
趣味が悪い事だけだった
「ヤバいなぁ.....」
ここら一帯は住宅街、人が多く暮らしているし
建物も辺りに沢山建ち並んでる
そしてここは奥が岩肌に面した広い空き地
おおよそ横幅が40メートル位?か
縦幅は大体50位メートル位の長方形の地形
中には“何も無い”
つまり頼れるのは自分の身体能力と蔵王のみ
しかし蔵王を使うと朧纏の術が解けて
人目につく可能性がある
かといってこの状況、
蔵王無しでは到底攻略不可能な力を
あの趣味の悪い斧は有している
朝は必死で塾考するが脳内で
アイデアを出しては却下の繰り返し状態だった
脳内で却下すればする程
追い込まれているのが事実として体に染み渡り
冷や汗が止まらない
そして
「どうしよう.....」
蔵王を両手に構えながら
思わず心根が口から漏れてしまった
するとその時
ィィィィィン
という音が雷鳴の如く周囲に響き渡った