不運
一方その頃行き違いになった謀二人は
「無事で居ろよ夕姉!」
住宅街の屋根という屋根を
バネのついた兎のようにピョンピョンと
跳ねるようにジャンプして渡っていく朝
両の手には万が一に備え
蔵王が力強く握り絞められている
普通なら両手に剣を持ち尚且つ屋根をジャンプ
して渡っていけば嫌が応にも目立つだろう
しかし彼が人目に触れる事はまず無い
「朧纏の術」【おぼろまといのじゅつ】
この術がかかっている者は体面上に
特殊なガスが発生する、
そのガスは空気中に漂う水素と結合し
特殊な成分を含んだ霧が生成される
この霧の水粒子がレンズの役目を果たし
光を屈折させ幻を作りあげている
因みに姿を消したり物に術をかける事も可能
早い話、人に見つからない為の術だ
しかし
この術は移動する時だけ有効な術であり
攻撃をしたりされたりすると霧が晴れてしまう
そしてこれは人間に対しては有効だが
妖怪や幽霊などといった存在に対しては
大した効果は得られない
故に移動用もしくは隠密用の術とされている
そして今現在某住宅街
朝は夕闇が先程までいた場所に降り立った
「...誰も居ねぇじゃん」
夕闇は朝の方に行く前に
牛頭の死体に朧纏の術をかけて置いたのだ
無論斧にも
朝は周りをキョロキョロと目を動かし見た後
首を左右に動かし目の前の景色に
何か手掛かりが無いか確認した
だが何も無かった
「っかしぃな~」
朝は右手で後頭部を掻きながら
現状の光景に混濁していた
「場所間違えたかな~?」
でも確かにここだったと思うけど...
夕姉の気配だって感じたし.....ん?
気配?
...............あ
慌てた様子で手に持っている蔵王を見る朝
「..........あ~.....なるほ」
あ~夕姉もだったのね~
朝はここでようやく自分が
行き違いになった事を
理解した
「ん~」
眉をひそめ、腕を組み、視線を下に向けて
考えこむ朝
「.....まぁ戻るか」
塾考した結果朝は自分の元居た場所に
戻る事にした
早速朝は後ろを振り返り
今まさに来た道を戻ろうとしたその時
ガラガラッ