夜と夜津葉
「御無事でしたか夜様」
着地の際枯れ葉を踏み散らし
落ち葉を空中に舞い踊らせたのは
夜の直属の部下である夜津葉だった
夜津葉は右拳と右膝を地面に着け、
上向きの左膝に添える様に左手を置いて
無事の安否を確認した
「ん…」
来たのが夜津葉だと分かると夜は再び前を
向き一言自身の無事を夜津葉に伝える
「遅れてしまい申し訳ありません
私なりに身を粉にして探したのですが...
一向に夜様の足取りが掴めず...」
夜津葉は緊張と不安を喉に張り付かせ
後悔という名の炎に身を焼かれながら
自身の不甲斐なさを悔いる様に詫びている
そんな夜津葉の姿を静視した夜は
夜津葉の肩にポンッと掌を被せ一言
「...大丈夫」
とだけ伝えた
「夜様...」
夜様は余り感情を表に出さないお方
それが先天性の物なのか
後天性の物なのかは誰にも分からない
でも家族や仲間の事は本当に大切に思っていて
部下や仲間がミスをして落ち込んでる時は
寄り添ってくれたり励ましたりしてくれる
今の私のように
「...ありがとう...ございます」
夜津葉は夜の配慮の言葉に対し
心の底から安堵した様子で感謝の言葉を捧げる
「...ん」
夜はそれが当たり前と言わんばかりに
いつもの口調で返事を返す
「所で夜様、つい先程までここに来る途中
妙な気配を感じたのですが...」
夜津葉は疑問と心配を含んだ口調で
目の前の主に確認を急いだ
「...元凶らしき存在を確認した」
夜はつい先程突如黒い渦煙と共に現れた燕尾服の男について話した
「燕尾服に黒いハット帽の男...ですか」
夜津葉は疑問に声を籠らせて
男の特徴を再度確認する
「...そう...その男だけは他と気配が違っていた」
その時夜はふと思った、
もうじき“これ”を使う事になるだろう...と