危険な存在
「フフフ、初めまして誘意家の当主さん」
渦を巻いた黒い煙は徐々に晴れてゆき中から
燕尾服に身を包んだハット帽の男が
が不気味な微笑みを浮かべて現れた
「.....誰?」
夜は瞬間気づいた、この男は人間では無いと
しかし妖怪や幽霊といった類の者でも無い
得体が知れない、何とも言えぬ不気味さが
体からにじみ出ている
「さぁて誰でしょう」
男は依然不気味にニヤけたまま返事を返した
「.....」
夜は相手を睨むように見つめる
「フフフ、怖い怖い」
なるほどねぇ
誘意家の当主を継ぐ実力は本物という訳だ
男は夜の睨め殺すかのような鋭く殺気の籠った
瞳を一目見ると夜の実力が
如何に強大かつ圧倒的な存在か瞬時に悟った
これは早いとこ、おいとましようかね
そう思った矢先
「.....逃げるの?」
「おや?」
唐突に未来の自分の行動を当てられ
男は少し驚き思わずその場に立ち止まった
「あまり長居しても迷惑だと思ってねぇ」
なぜ分かったんだ?
男は両手の掌を上に差し出し
不気味に微笑えんでいたが
それは動揺を隠す為のシールのように
薄っぺらな偽物の笑みだった
「...」
夜はそんな薄っぺらな表情を読み取ってか
警戒はしつつも、どこか安心している
この男の意表を突いた、つまり
自分の“能力”が通じる事が証明されたからだ
「?」
男は疑問そうに夜を見ている
何故分かったのか
自分はあの時大して動いていないにも関わらず
「まぁいい」
今は一刻を争う
時期にこの女の部下がこちらにやって来る
この街で竹林はここだけだからな
「また会いましょう誘意家の当主さん」
男は手をヒラヒラと振りながら生親津を抱え
体から黒い煙を噴出した後に
煙と共に姿を消した
「.....」
夜は脳裏に刻み付ける様に記憶した、
今の男は間違いなく危険な存在だと
そして今夜の戦いは荒れるだろうという事を
そうして頭の中で思考を張り巡らせていると
夜のすぐ後ろで
ジャッ
という枯れ葉を踏み絞める乾いた音が鳴った
夜が素早く振り返るとそこにいた者は ...