猶予
「.....仕方ない」
パタン
燕尾服を着た男は顔を隠すように
帽子を少し下へ傾け、分厚い本を閉じた
「まぁこれだけ出来れば中の上といった所か」
男はボソボソと小さな声で独り言を呟く
「余り見られたくは無いのだがな...」
そう言うと男はフッと煙の様に消えていった
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「...ねぇ、君本当は何しに来たの?」
夜は歯に物着せぬ言い方で直接聞いてみた
「.....さぁね、ただの旅行さね」
生親津は正気に戻り
冗談の混じった見え見えの嘘で
返事を返した
「...」
夜は黙って相手を見つめている
「.....なっ何さ」
少し慌てた様子で聞いてくる生親津
「...別に」
少し残念そうに視線を下に落として
返事を返す夜
もしもここで目的を言ったなら少しは楽に.....
と思っていたが淡い期だったと痛感した夜
「...もういい、猶予はここまで」
夜はあえて殺さず加減し痛めつける事で
相手が目的を洗いざらい全部自白するのを
待っていた
だが所詮は妄想や夢に近しい現実味の無い
可能性の話だったという事だ
「あら残念、延長お願い出来るかしら」
生親津は少しニヤついた顔で冗談を語る
「...余裕だね」
.....
夜は右手に持っている布袋を斜め下に
振り払いながら尋ねる
「まぁね」
助かったぁ~♪
すると突然
生親津の横に黒い煙が渦を巻いて現れた