生親津分身ノ命
遡ること一時間前
「.....さようなら」
布袋を片手で持ち上げ、いつでも降りおろせる
体勢に入る夜
「ごめん...なさい...............なぁんてね~♪」
さよならはお前だ!!
死ね!
夜が布袋を振り下ろす刹那
後ろから物が破裂したような大きな音と共に
大量のナイフが夜めがけて放たれる
「...!」
「あばよ!!ば~か♪」
こいつはきっと旨いぞ~♪
早く死ね!早くその柔らかそうな肉食わせろ!
自分は巻き込まれないよう、
後ろへジャンプしながら涎を垂らす<何か>
「.....なるほど...」
右へ一歩、左へ二歩、右へ半歩、右へ四歩
そして左へ三歩
夜はまるでナイフの向かい風のような攻撃を
空中でひらひらと舞う半紙のように
ひらりひらりと避わし、何事も無かったかの
ようにそこに立っていた
かすり傷一つ負わずに
「!! はぁ~~??!!」
えっ?えっ??
いやっあの体勢で避けられる量じゃないゾ!!
そもそも死角から完全に不意討ちで
仕掛けたんだ
さらに念には念を入れて
あれだけナイフを“分けて”おいたのに
あり得ない!あり得ないあり得ないあり得ない
あり得ない!!
「...やっぱり.....君」
困惑している<何か>に対して水を刺すように
言葉を言い放つ夜
「?」
やっぱり?
「...君.....【別万】“生親津分身ノ命”でしょ…」
【別万】・・・ことよろず
“生親津分身ノ命”・・・うみつわけみのみこと