ロア・ジョーカー
「フフフ」
あの子達も大変だなぁ~手伝ってあげようかな
でもここで私が手を貸すのは........まぁいいや
見てる方が楽だし
ゆっくり見物させてもらおうかな~
☆
竹の香り 木々や葉っぱが風で擦れる音
木々の隙間からこぼれる陽光
「...綺麗」
小さな頃から自然が好きだった
飛び交う小鳥の鳴き声
ヒラヒラと舞い落ちる木の葉
大きく立派な大樹の枝々から射す木漏れ日
美しい
時を忘れて魅入ってしまう
「人の手では到底作り得ないからこそ美しい 」
私はそう思う
「君はどう?」
そう言いながら夜は後ろを振り向いた
そこには誰もいなかった
そう
<そこには>誰もいなかった
「首も~らった!!!」
ガギッ
!?
「あれ~?おかしいな~確実に首を跳ねたと思ったのに~どうして分かったの~~?」
「気配」
夜は普段とは違う真剣味を帯びた声色と口調で
返事をした
「気配~?いやいや分かる訳無いでしょ!
あたしはバレないように気配消して上から
襲ったんだから、普通なら貴方の首はもう
私の足下に転がっているのよ?」
コイツ、何か他の人間とは少し違う感じがする
雰囲気というか気配というか...
何かが違う...
「貴方...何者~?」
完全に気配は消していた
息も止めたし音も出さなかった...
だのにコイツはあたしのナイフを難なく防いだ
どういう事かしら
「.....さぁ...なんだろうね...」
「あら、つれないわねぇ~」
知られると何かまずい事でもあるのかしら
まぁ確かに、敵に自分の情報を漏らすなんて
阿呆のする事だわ
「そういう君は何者?」
「あら、自分の事は教えないくせに
相手の事は知ろうとするのね~貴方は」
「闘いとはいかに相手を知り得るかであり、
先に見極めた者こそが勝者と成り得る」
「あら~結構分かってるじゃない」
コイツ、相当な手練れね...
さっきからずっと隙を探ってるけど
針穴一つ見当たらない...
しかも...
あの長い布袋、得体が知れない...
私のナイフは日本刀と大差無い程に切れる
金網も難なく切れるし、ワイヤーだって切れる
そのナイフの斬撃をいとも容易く受けるなんて..
ただ単にこの女がヤバいってのもあるけど....
よほどの代物でなきゃ不可能な芸当だわ
「ねぇその布袋の中に何が入ってるの~?」
まぁこんなド直球に聞いても
返事は大体見えてるけどね
「....さぁなんだろうね...」
ほらね
だと思ったわ
敵に自分の武器の情報を漏らす訳無いじゃない
しかし
相手に隙が無い以上、迂闊な行動は出来ない
「いかに相手を知り得るか」.....ね
確かにと言わざるをえないわね
相手の事が分からない以上
何が正しくて何が過ちになるか分からないもの
ここは.....仕方ない
「もういいわ」
「?」
「お互い止めにしましょう」
「.....何を?」
「様子見を」
「.....」
「こんな事しても埒が明かないし」
「そうだね」
「ここからは本気で殺りに行く」
「.....そう」
ここからが本番
お互い力を隠してるのは火を見るより明らか...
ならば相手の力を引きずり出し
相手より先に見極める
「じゃあ行..........え??」