道化師ライフ1
寝起きにも関わらず、いつも通り頭が冴えている。おそらくそういう体質なのだろう。
表情を変えず、いわば作業のように朝食を食べている僕に母は、裕ちゃんは寝起きが良いわよねと言ってくる。
端から見たら不自然な僕に、母は物心ついた頃から、いつも変わらぬ態度で接してくる。それは父も同じだ。
その態度は、僕の能力を知っているのに、それを隠して振舞っているのか。それとも全く知らず、ひとりの平凡な人間として、ひとりの子として育ててきたのか。
今まで一緒に過ごして感じた。おそらく前者ではない。だとしたら、僕の正体は親ですら知らない。
それは、何故か僕に罪悪感を抱かせる。いろいろな思いが混ざって、一体自分は何に対して罪悪感を抱いているのかはっきりとわからない。
その償いに、何か手伝えるものはないかと聞いてみる。普段言葉を発しない人物から、唐突に話し掛けられたことで、母は少し驚いたような顔をして、少し間をあける。その少しの間が、僕にはとても怖くて長く感じた。
その反応が、自分の哀切な様子を物語っているように感じられた。
哀れだと自分でもしみじみと感じる。
そんな自分に呆れて嘆息する。しかし、それが喉を通って出てこないもどかしさ。ずっと身体の中で残っていて気持ちが悪い。
それが日に日に内臓のはたらきを低下させて、人間として生きることを阻害しているように思える。神は、僕が人間として生きることを許してくれない。
だったら、それに抗う必要はあるのだろうか。
…いやない