道化師グリーフ1
僕は人間を装った化け物です。
人間として生まれながら、人間離れした能力を持っている化け物です。
僕は、今までこの能力を隠し続けてきた。
本当の自分を押さえつけ、いつも仮面を被って生活してきた。
辛い。...そして怖い。
押さえつけているものが、今にも破裂して、僕の体を壊してしまいそうで...
僕の中にいる化け物は、僕の自由を束縛し、恐怖に陥れてきた。
早く僕の中から出て行ってくれ。
僕は普通の生活を送りたい。
いつも恐怖に怯えている生活など嫌だ。
友達とワイワイ遊びたい。
本当の自分を曝け出せる親友がほしい。
今まで、人間と同じ生活を送ってきたが、人間関係に大きな隔たりがあるのを感じた。それはそうだ。僕は人間ではない。本当の自分を押さえつけて、自分の思う人間を自ら作ってきたのだから。
恐らく2年も人間と接していなければ、振る舞い方を忘れてしまうだろう。
そう思うと、胸が締め付けられる。
人間になれない悔しさと、本当の自分を隠して生活していることへの恥ずかしさが、僕の胸の中をパンパンにしている。
僕のしたことで、誰かが喜んでいても、僕は嬉しいとは思えなかった。なぜなら、それは本当の僕がやったことではなく、もう一人の嘘の自分がやったことなのだから。
人間と同じような感情が、僕にはないのだろうか。
僕は素の自分で笑える日が来るのだろうか。
おそらくそんな日は、僕には来ないだろう。
いっそのこと、死にたい。
本当の自分を押さえつけ、毎日苦しんで暮らしているよりかは、死んでしまった方が良いのではないか。
そもそも、本当の僕は、僕の中で生きているのだろうか。もう死んでしまっているのではないか。
本当の僕の魂は、僕の中から消え、体だけが残っている。それを、もう一人の僕が操っているのではないか。
でも僕には意思はある。
心の中では、どうしたらいいか分かっている。笑いたいとも思っている。でも、それが心の中に閉じこもって、一向に出てこようとしない。
...悔しい
自分の指示に、体が従ってくれない。
もどかしい。何かに八つ当たりしたくなる。
でも、そんなことをしたら、今まで押さえつけていた力が、自分の意に反して発動し、止まらなくなってしまうのではないか。完全に僕の体は支配されてしまうのではないか。
もしそうなったら、僕自身だけでなく、周りの人たちも壊してしまうだろう。
それだけは避けたい。
僕の問題を、他の人にまで広げたくない。
この化け物の被害者は僕だけで良い。
そうならないために、一番手っ取り早い方法は僕の体を破壊することだ。
この化け物の居場所を無くせば、外界に影響を及ぼすことは出来ないだろう。
それ以外に思いつかない。
でも、僕は生きなくちゃいけない。
守るべきものがあるから。