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いぬたまっ!  作者: 椎贔
9/11

狼少年と大狼といぬたまっ!

自信があると言うだけあって、プス太の剣技は見事なものだった。

街に着くまでの道中、魔物はちょくちょく現れたのだが、

おれとシービーが手を出すまでもなく、プス太が次々になぎ倒して行く。

その動きは正に、蝶の様に舞い、蜂の様に刺すという表現がふさわしい。


そんなこんなで俺達は、遂にカルミッチの街のすぐ側までやってきた。

この辺りまで来ると、人間ともちらほらすれ違うようになってきた。

そんな折、切り株に腰かけた一人の少年がじっとりと俺達を見つめていた。

犬と猫と魔女が一緒に歩いているのがそんなにめずらしいのか。

すると少年はニヤリと不敵な笑みを浮かべ、街の方へ走っていってしまった。

いったいなんだったのだろう。

その原因はすぐにわかった。街の中央にある巨大櫓の上で

さっきの少年が鐘を鳴らしながら叫んでいた。


「凶暴な巨大狼が来たぞぉぉぉ!みんな逃げろぉぉ!

凶器をひっさげた猫又と醜悪な魔女まで来たぞぉぉぉぉ!!!」


なんといううそつき!まあ、しかし狼と言われるのは正直悪い気分はしない。

一番落ち込んでいたのは……


「し、醜悪な魔女……ひどぃ……」


シービーだった。

そして意外な事に、緊急事態を告げる鐘が鳴っても街の人間達は全く

動じる事はなかった。


「また羊飼いの虚言癖がはじまったか……あぁ、あいつが言ってるのはお前さん達

の事だろう?悪かったなぁあいつはいつもあぁなんだ、許してやってくれ」


屋台で果物を売ってる髭をたっぷりと蓄えたおっさんが、俺達にそう言い

お詫びにとリンゴを3個くれた。それをシャリシャリ食べながら街を

ぶらぶらしているとシービーが言ってきた。


「とりあえずせっかく街に来てるんだから今日泊まる宿を探そうよ!野宿はもうこりごり!」


ふむ……宿か……


「お金持ってるのか?」


「え?」


「え?って宿だってタダじゃないだろう。言っとくけど俺はビタイチ持ってない……

プス太はどうだ?」


プス太はかぶりを振った。


「長靴がなかった頃は人語を解する事も出来なかったので、お金を持っていても

使い道がなかったので……」


「そういう事だ、シービーもしかしてお前も全くないのか?」


「ない!!!」


なぜかドヤ顔で言ってきたのがムカついたから、リンゴの芯を投げつけてやった。

さて、お金を稼ぐ方法はないものかと考えながら歩いていると、ある看板が

目に止まった。


【勇者急募!完全歩合制 カルミッチ中央ギルド】


「これだっ!!!」


俺達は早速ギルドの前ににやってきた。

するとギルドの門が開き、中から鋼鉄の鎧を身に纏った屈強な男が3人ほど出てきた。

そして俺達に気付いたとたん大笑いしだした。


「おい、みてみろよ!動物が一丁前に武器なんか装備してやがるぜ!HAHAHA!!!」


たしかに俺達は傍からみればそれは滑稽だろう。斧を背負った犬に、長靴をはいた猫に

魔女の格好をした少女。オ○の魔法使いかよ!と突っ込まれても致しかたない。

しかしバカにされて黙っていては犬がすたる!


「お前らこそ、そんなに重そうな鎧を着込んで、見てるだけで暑苦しいわぁ!」


「おっと、威勢のいいわんちゃんだ。もしかして勇者になろうとここに来たのか?

それだったら諦めた方がいい。実技試験があるんだが、ここのギルドはやたらと

厳しい。俺達ですら不合格だったんだ」


勇者資格を得るのに実技試験があったなんて知らなかった。

それにしてもこの屈強な男達ですら受からないなんて、いったいどんな試験なんだ。

しかし、お金を手に入れるにはギルドに入るしか……

その時だった。


カーーン、カーーン、カーーン

先程この街に来た時と同じように鐘が鳴った。

「大変だ狼だ!とんでもない大狼が街に向かってきている!!

皆早く非難するんだぁぁl」


街の人たちはそれを聞いても全く動じる気配はない。

なるほど、またあのうそつき少年か……そう思った時だった。


ずどぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおんんん!!!!!!


ものすごい爆音がしたかと思うと、数十メートル先の建物が一瞬にして粉砕した。

土煙が辺り一帯を覆い、瓦礫やら木片やらがパラパラと降ってくる。


「な、なんだ!?いったい何が起こっているんだ!!??」

土煙がだんだん晴れてきた事によってその正体が明らかになった。


「ガオォォォォォォォォォォオオオ!!!!!!」


そのけたたましい咆哮はまるで地鳴りの様に響き、天地を揺るがした。

その場にいた誰もが耳を塞ぎ、しゃがみ込んでしまう。

……それは正に身の丈十数メートルにも及ぶ大狼だった。

おれは思った。このままでは俺達どころか、街全体が崩壊してしまう。

た、戦うのか?はっ!そういえば鎧を着た3人の屈強な男達は!?


ぬぎぬぎぬぎ


そいつらは何故か靴を脱いでいた!


「おい、なんで靴脱いでるんだよこんな時に!!」


男達の一人が靴を脱ぎながら答えた


「よく見てみろ、あんな大狼相手に戦ってたんじゃあ命がいくらあってもたりねぇ

つまり俺達が言いたいのはだな……」


次の瞬間、裸足になった男達は大狼とは全く逆の方向に向かって走り出した。


「裸足で逃げだす事だぁぁ!!アディオス!わんちゃん達!」


なんという事だ。これまで「裸足で逃げ出す」を物理的に実行した人間が

かつて居ただろうか。その潔さ、感服する!

だが……


「おいプス太!お前はなんで長靴を脱ごうとしているんだ!!??」


プス太までこんな調子かよ、シービーに至っては「見てみて!お花が咲いてるよ!」

と、現実逃避している始末。致し方あるまい、ここはおれがあの大狼を止めるしか

なさそうだ!!


←To be continued

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