猫といぬたまっ!
「……はらへった……」
あれからすっかり森を抜けて、おれ達は街に向けて着々と歩を進めていた。
しかし一向に街に着く気配も無いし、歩けば歩くほどおなかがよく鳴いた。
「わんこちゃん、もうおなか空いて歩けないわぁ」
シービーは遂にその場にへたり込んでしまった。
たしかに犬の姿のおれですら歩くのが辛くなってきている。
なにか食べ物を食べて休める場所を探さなくては……
近くに川が流れている。川魚を捕まえて食べるか……
川に来た俺達は枝に頑丈な葉っぱの繊維を括りつけて先っぽに毛虫をつけて
川に垂らした。いわゆる釣りだ。こんな事で川魚が釣れるほど甘くないと
思ってはいたが、竿を垂らしてすぐに引きがあった。
「おぉ!きたぞ!!」
おれは口に咥えた竿を思い切り引いた。
竿に掛ったそれは水中から勢いよく飛び出した。
「おぉぉ!お……?おぉ……」
勢い良く飛び出したのは長靴だった……。なんというベタな
「わんこちゃん、おもしろくないわぁ」
別に受け狙いじゃないし!と言いかけたが、怒るだけ体力を消耗するのでやめた。
根気よくもう一度釣りを再開しようとした時、シービーの竿に獲物がかかった!
「ゎ、わ!きたぁぁ!」
「お、落ち着け!勢い良く引き揚げろ!!!」
シービーは思い切り竿を引き、尻もちをついた
その獲物は空中に舞い、シービーの頭にコツンと当たった。
その衝撃で、シービーのブカブカな魔女帽子が自分の目を覆ってしまった為
しばらくおろおろしていた。
その帽子を引き上げた後、彼女は落胆した。その獲物がまたしても
長靴だった事に……。
先程釣りあげた長靴のもう片方だったようだ。
長靴にしては珍しく黒い革に金色の綺麗な装飾が施されていて
長靴というよりは貴族のブーツというのが妥当だろう。
しかし、サイズがとても小さい。子供用らしい。
売ればそれなりのお金にもなるだろうが、生憎街までまだまだ距離がある。
俺達は仕方なくその長靴をそばに並べて置き、釣りを続ける事にした。
暫くなんの成果もないまま釣りは続いていた。
最早俺達の間に何の会話も無いまま時間だけが過ぎていく。
そこに、どこからやってきたのか一匹の猫がやってきた。
「にゃぁにゃぁ」
銀色の毛色に黒いクルクルの渦巻きのような縞模様がはいってる。
「かっわいぃ!どこからきたんだろう?おいでぇねこちゃん」
シービーがしゃがみ込んで手招きする。
しかし猫のほうはシービーには全く目もくれずに、なぜかさっき釣りあげた
ばかりの取れたてピチピチ長靴にすり寄って行った。
「なんだ?長靴を魚と勘違いしてるのか?それともこの世界の猫は
長靴も食べちゃう食い意地の張った動物なのか?」
俺は犬派だ。誰が何と言おうとね。
だからこの世界に来た時もし猫の姿になっていたなら、
やる気のヤの字も沸き起こる事無く、ただにゃぁにゃぁ言う役割を
まっとうしていた事だろう。だから皮肉を混ぜてそう言ってやった。
その猫はどうした事か、器用に自分の後ろ脚にその長靴を履き始めた。
「この猫長靴の使い方を知ってるのか!でも長靴なんか履いてどうするんだよ、ははは」
しかし次の瞬間、猫は後ろ脚だけで立ち上がり二足歩行をし始めた。
更にどこから取り出したのか、羽根つきの帽子を被り、腰にベルトを巻いた。
「ふぅ、こんな所にあったのか、僕の長靴は……」
←To be continued