童話の森
見事案内天使を下したおれだったが
特に行く当てもないので、案内天使の言っていた
カルミッチという街を目指して北へ向かうことにした。
犬の姿になっていくつか発見があった。
まず、外を歩いているとなぜかわくわくする。
木をみると無性におしっこをかけたくなる。
嗅覚がハンパない。目視で見えない所にも何があるのか
だいたい匂いでわかる。
暫く歩いていると森を発見した。北に行くにはこの森を
抜けなければならないらしいので俺はその森の中にはいっていった。
森の中は流石ファンタジーと思える幻想的な雰囲気だった。
虹色の大きなキノコや翼の生えた兎。
顔のある木はおれに話しかけたそうにしていたが、
流石に気持ちが悪いので見てみぬふりをして先を急ぐ事にした。
森の奥には大きな池があった。
犬の姿ではゴクゴクとは飲めないので、舌を使って
暫くぴちゃぴちゃ舐めていた。
すると森の中からなにかが飛んできて池の中に派手に落下した。
俺は突然の事に驚き、上半身を屈めて威嚇のポーズ!
そしてとたんに水面が光り出し、水中から金の斧と銀の斧を
手に持っているというなんとも猟奇的な女の人が姿を現した。
「まじかっ!唐突にボスかっ!!」
いきなりの強敵出現におれは正直足がすくんでいた。
正確には片方の前足が浮いていた。
なにせ、この世界に来てから経験値を稼いだのは1回。
案内天使を倒した時のみ。現在2レベル。
装備なんて物は一切ない。犬だから許されるものの実質全裸なのだ。
勝てる気がしない!
汗が噴出す!
(とは言っても犬なので汗はかかない。汗のかわりに
舌を出してハァハァするのと、肉球がポップコーンみたいな
臭いになるのだ!)
ここは犬の利点である速さを利用して逃亡するのがベストか、
などと考えていると、女の人はおれに話しかけてきた。
「かわいいわんこよ、あなたが落としたのはこの金の斧?それとも
銀の斧?」
この時俺の脳内は完全にパニックに陥っていた。
そしてこの質問は被害妄想も兼ねて、瞬時に全くの誤解へと変換
されていた。
いぬたま脳内変換
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「薄汚い野良犬よ、お前はこの金の斧と銀の斧、どちらで葬られたい?」
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こんな質問はへたなジャギより性質が悪い!
おれは迷うことなくこう叫んでいた。
「どっちも嫌だわぁぁぁぁぁ!!!」
「ほぅ、どっちも違うと。正直なわんこよ、あなたにどちらとも差し上げましょう」
そう言うと女の人は両手に持っていた斧をおれに差し出した。
・いぬたまは金と銀の斧を手に入れた!
正直ちょっとちびっていた。いぬの姿で良かったと思った。