プロローグ
「いててて……ちくしょう……」
「アハハハハ! 相変わらず弱っちいの!」
「うるさいっ! バカ!」
「バカって言った方がバカなんだよ~だ」
「う~っ……」
「そんなことじゃ、いつまで経っても私のお嫁さんにはなれないよ?」
「あ、バッカでぇ。男は『お婿さん』って言うんだよ。そんなことも知らないの?」
「……! い、い~んだもんっ、私が間違えるわけないもん。ナミトが間違ってるのよ!」
「い~や、ユキが間違ってる」
「なによ、一回も私に勝てない弱虫のクセに! ベーだ、弱虫弱虫ぃ~だ!」
「うっせえ! 手を抜いてやってるだけだろっ! 調子に乗るな!」
「嘘つきぃ! もし本当なら、私がナミトのお嫁さんになってあげるわよ~だ!」
「言ったな!? 見てろよぉ!」
「どうして行っちゃうんだよ!? ぼくのお嫁さんになる約束だろ!?」
「だって……仕方ないんだもん」
「嘘つき! ぼくが勝ったらお嫁さんになるって約束したじゃないか!」
「……だって」
「嘘つき! 嘘つき! 嘘つき!」
「……私だってっ……」
「何だよ!?」
「なによぉ、分からず屋! ナミトなんか嫌い! 大っ嫌い! バカァ!」
「……っ。嫌いで結構だよっ! ユキなんか死んじゃえ、バーカ!」
「おい……あれが」
「ああ。兵藤、関東中学大会の覇者……」
「やっぱり、威厳っていうか、まとってるオーラみたいなものが違うな」
「……そうか? お前、適当なこと言ってねえ?」
「フン、お前程度では分からない……ん?」
「あれ、どうしたんだ?」
「ちょっ……何だ!?」
「医者だ、医者を呼べ、医者!」
「お久しぶりです、おばさん」
「……失礼ですけど、どなたですか?」
「あ、えっと……ユキちゃんと幼なじみだった……」
「……ナミトちゃん? ナミトちゃんなの?」
「はいっ! お久しぶりです、おばさん」
「ええ……ええ、懐かしいわね、本当に……もう中学生? はやいわね」
「はい。それであの……ユキちゃん……いますか?」