忘れゆく友への手紙
わたしと
碧のオウロラを見たのも
桃色の陽を飲んだのも
逆さの海で泳いだのも
もうきっと忘れてしまったのでしょう。
そう思うとわたしの心は、
哀れみにも、悲しみにも変わるのです。
オウロラはもうまるで羅紗のようで、
そこかしこに、飛んで行かないように鋲で留めてある。
はじめは透明だった、
そのうちきんいろになって、
そして最後に桃色の。
掬った手のひらが温かくなって、
口に入れた途端
ふわりと甘く、
飲んでいるのに眼からも水が流れたのです。
波は凪いでいて、
漣がたっている。
泡がいくつか海から昇った
空気に触れるは何時になるやら
海にはひとつ
大きな真珠が。
きらきら光って
また海を宥めるのです。
まばたきさえも厭に思えて、
ずっと見ていた。
あなたが忘れたこの世界は、
わたしにもまたわからないのです。